研究分担者 |
SUBEDI M N. ネパール王立森林植物研究所, 研究官
米林 仲 千葉県立中央博物館, 学芸員
八木 浩司 防衛大学校, 地学研究室, 助手
辻 誠一郎 大阪市立大学, 理学部, 講師 (20137186)
高山 晴夫 鹿島建設株式会社, 技術研究所, 研究員
杉田 久志 岩手大学, 農学部附属演習林, 助手 (60154473)
門田 裕一 国立科学博物館, 植物部門, 研究官 (30124184)
SUBEDI Mahendra N. Researcher. Department of Forestry and Plant Research, H. M. G. Nepal
SUBEDI M.N. ネパール王立森林植物研究所, 研究官
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研究概要 |
1.地形発達および層序 (1)1990年度に湿潤地域であるネパ-ル東部のシプトンパス周辺で地質,地形の調査を行ない,7ヶ所で合計約60kgの堆積物試料を採取した.少なくとも3回の氷堆石の発達が見られ,年代測定値とも合わせて考えると,これらはそれぞれ最終氷期前半,最終氷期後半,完新世の小氷期に発達したものであることが分かった. (2)1991年度にやや乾燥した地域であるネパ-ル西部のジュムラ南の山塊で地質,地形の調査を行ない,5ヶ所で合計約50kgの堆積物試料を採取した.東部ネパ-ルと同様に少なくとも3回の氷堆石の発達がみられた.年代測定値はまだ得られていないが,東部ネパ-ルと対応している可能性が高い. (3)ヒマラヤ地域における氷河の発達の時期の直接の証拠は,今回の研究により初めて得られたものである. (4)1991年度にカトマンズ盆地で地質調査を行なった.従来カトマンズ盆地の周辺の段丘堆積物はいずれも最終氷期のものと考えられていたが,実際には中期更新世までさかのぼるものが含まれていることが分かった.現在年代測定を実施おり,より説得的なデ-タが得られるものと考えている. 2.植生調査 (1)1990年度には17地点で,1991年度には14地点でコドラ-トを設けて植生調査を実施した.草本を含む全群集を記載しており,このような取り組みはネパ-ルでは初めてである.1990年度のものについては同定とデ-タ整理が終了しており,現在取りまとめ中である. (2)カトマンズ盆地近郊のシュワプリ山に永久コドラ-トを設置し,調査を開始した.成長肥大を測定するまでにはいたっていないが,マ-クなどは継年的に保存されており,将来の再調査が可能であることを確認した. 3.表層花粉および植生変遷 (1)植生調査を行なった全ての地点で比較検討のための表層花粉資料を採取した.予察的検討では,おおむね現在の周辺の植生と類似した組成を示すが,Shorea林でもその花粉がほとんど産出しないなど検討課題が残っている. (2)カトマンズ盆地周辺の堆積物からは,Quercus semecarpifolia(落葉のナラ)やTsugaに富む大型植物化石群と,Qurcus glauca(常緑カシ)に富む大型植物化石群が得られた.乾簡冷涼な氷期の植生と湿潤温暖な間氷期の植生を反映しているものと思われる. (3)1990年度と1991年度のカ-ル湖堆積物試料の花粉および大型植物化石の分析は終了していない.花粉の保存は良好であるが,草本で同定困難なものがあり,現生種も含めた基礎的な研究から取り組んでいる.大型植物化石も細片が多く,基礎的研究から取り組んでいる. 4.その他 (1)1990年度,1991年度ともに約10,000点の植物標本を採集した. (2)これらにはいくつかの新種・新変種・新分布が含まれており,順次報告する予定である. (3)標本は現生の植物ならびに化石共に1セットを王立森林植物研究所に寄贈する予定である.1990年度調査分で同定を終了したものについては,1991年に参加し,王立森林植物研究所に寄贈した.
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