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太平洋民族の起源に関する人類学的研究(調査総括)

研究課題

研究課題/領域番号 02041096
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
研究機関国際日本文化研究センター

研究代表者

埴原 和郎  国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (70011707)

研究分担者 埴原 恒彦  自治医科大学, 解剖学第一講座, 助手 (00180919)
石田 肇  札幌医科大学, 解剖学第二講座, 助教授 (70145225)
百々 幸雄  札幌医科大学, 解剖学第二講座, 教授 (50000146)
鈴木 隆雄  東京都老人総合研究所, 疫学部, 部長 (30154545)
ISHIDA Hajime  Associate Professor, Dept. of Anatomy, Sapporo Medical College
HANIHARA Tsunehiko  Research Associate, Dept. of Anatomy, Jichi Medical School
SUZUKI Takao  Director, Dept. of Epidemiology, Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology
DODO Yukio  Professor, Dept. of Anatomy, Sapporo Medical College
研究期間 (年度) 1990
研究課題ステータス 完了 (1990年度)
キーワード太平洋民族 / ポリネシア人 / ミクロネシア人 / 起源 / 進化 / 人骨 / 歯 / 古病理学
研究概要

平成2年度はホノルル市・ビショップ博物館所蔵の太平洋民族人骨約150体について計測ならびに観察を行った。人骨の主たる出土地は次のとおりである。
1)ハネ遺跡(マ-ケサス島) 紀元1世紀ころ ポリネシア人
2)モカプ遺跡(オアフ島) 17ー18世紀 ポリネシア人
3)イパオ遺跡(グアム島) 14ー17世紀 ミクロネシア人
調査項目は頭骨計測、歯冠計測、頭骨および四肢骨の非計測的形質の観察、および古病理学的観察で、それぞれの分担者がデ-タベ-スを作製した。また頭骨を中心とする写真撮影(約800枚)を行い、原デ-タとともに研究代表者とビショップ博物館が保存することとした。
本調査は平成2年12月に実施したため、研究発表はまだ行っていない。しかし我々は昭和59年(1984年)以来5回にわたって太平洋民族人骨の調査を行っており、それらの知手を総括すると次の点が明らかになった。
(A)ポリネシア人の頭骨形態は、古い特徴を保存している東アジアの集団ー例えば日本の縄文人、アイヌ、フィリピンのネグリトなどーに近い、この結果は、ポリネシア人が東南アジア起源であろうという仮説を支持する。
(B)ミクロネシア人の頭骨形態もほぼ同様の傾向を示すが、ポリネシア人やアジア人とは明らかに異なる特徴を合わせ持っている。その理由は今のところ不明であるが、この事実はミクロネシア人が独特の進化、あるいは適応をとげたことを示すものである。ミクロネシア人、ポリネシア人、および古アジア集団の親近性を数量分類学的に分析すると、地理的にアジア大陸に近いミクロネシア人は、遠い地域に住むポリネシア人に比べてアジア人との生物学的距離が離れている。太平洋民族の起源に関して、この点は重要な鍵であるように思われる。
(C)ポリネシア人とミクロネシア人の歯の形態を分析すると、ともにC.G.タ-ナ-(アリゾナ州立大学)の「スンダ型歯列」に分類される。タ-ナ-によると、この形態は古いアジア系集団の特徴と考えられるで、歯の形態も頭骨と同様に太平洋民族の南東アジア起源を示唆する。但しミクロネシア人では切歯のシャベル形態が強く、この点ではタ-ナ-による「中国型歯列」に近い。この形態は中国人、モンゴリア人、北東アジア人、アメリカ・インディアンなどに現れ、弥生時代以降の日本人にも出現する。したがってミクロネシア人にシャベル形態が存在する理由は、彼らが「中国型歯列」を一部獲得した集団に由来するためかもしれない。しかし一方では、アジア大陸の集団とは独立にミクロネシア人がこの特徴を獲得した、という可能性も現在のところ捨て切れない。
(D)頭骨の非計測的形質の出現頻度を分析すると、他集団との親近性については計測値とほぼ平行する結果が得られた。したがって上記(A)ー(C)の推測は、非計測的形質によっても支持されると言える。
(E)古病理学的調査は多くの熱帯性病変の存在を証明したばかりでなく、古病理学に新知見を加えた。また骨の悪性腫瘍(ガン)など、出現の稀な病変に関する貴重な資料を得た。現在、これらのデ-タに基づいて古疫学的分析を行っている。
(F)以上を総合すると、ポリネシア人とミクロネシア人はともに古いタイプの東アジア人の起源をもつことがほぼ明らかである。しかしポリネシア人の方がミクロネシア人より早い時期に東アジア人と分離し、広大なポリネシア地域に拡散したと思われる。ポリネシア人と縄文人が類似することから、ポリネシア人の縄文人起源を主張する研究者もいるが、これは古アジア人の拡散を考慮に入れない短絡的思考の産物であり、採用することはできない。
なお、5回にわたる調査の結果を総合的に分析し、平成4年度の出版を目標としてとりまとめる予定である。

報告書

(1件)
  • 1990 研究成果報告書概要
  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (2件)

  • [文献書誌] 埴原 和郎(編・著): "Anthropological Studies on the Origins and Affinities of the Pacific Populations." 国際日本文化研究センタ-, (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1990 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Hanihara, Kazuro (editor): International Research Center for Japanese Studies. Anthropological Studies on the Origins and Affinities of the Pacific Populations., 1992

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1990 研究成果報告書概要

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公開日: 1993-08-12   更新日: 2016-04-21  

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