研究分担者 |
ROSAS WASHIN クスコ大学, 社会科学部, 助手
ESPINOZA HEC クスコ大学, 社会科学部, 助手
KUON ELIZABE クスコ大学, 社会科学部, 講師
MILLONES LUI サンマルコス大学, 社会科学部, 講師
FLORES Ochoa クスコ大学, 社会科学部, 教授
信岡 奈生 駿河台大学, 経済学部, 講師 (20228349)
加藤 隆浩 関西外国語大学, 外国語学部, 助教授
木村 秀雄 東京大学, 教養学部, 助教授 (10153206)
藤井 龍彦 国立民族学博物館, 第5研究部, 教授 (80045260)
ROSAS Washin クスコ大学, 人文学部, 助手
ESPINOZA Hec クスコ大学, 人文学部, 助手
KUON Elizabe クスコ大学, 人文学部, 講師
MILLONES Lui サンマルコス大学, 歴史・社会学部, 教授
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研究概要 |
アンデス高地においては,外来の要素と土着の要素がいりまじった,典型的メスティソ文化(融合文化)が成立している。そして,この文化の混沌に満ちた動的な性格が最も明瞭に現われるのが,都市という舞台である。申請者等は,このような高地都市におけるメスティソ文化の観察・分析を目標として,平成2年度より3年間にわたって,中央アンデス南部の高地都市クスコ,及び比較対象として中部海岸の都市カンタにおいて調査を実施して来た。その成果を,平成2年度に提出した「計画」にしたがい,4つの側面に分類して,以下に述べる。 1.歴史(1)今世紀前半におけるクスコ市:分析された歴史文書によると,1950年以前のクスコ市は,階層が明確に区分された伝統的都市の様相を保っていた。(2)その後のクスコ市の変容:1952年の大地震後のクスコ市においては,白人オリガルキーが解体し,周辺農村地帯や海岸部を含む他地方からの人口流入に起因する,都市住民の意識・行動様式の多様化と,階層区分の弱体化が進行した。(3)地方主義とインカニズム:中央集権化に対抗する形での地方主義が高揚し,異質化した住民意識を統合する作用をもつ「インカ」が,都市住民の歴史的アイデンティティのシンボルとして用いられるようになり,インディオの歴史もまた,「インカ主義」にからめとられてきた。 2.社会(1)都市への移住過程:アシエンダの解体に伴って農村部において社会関係が流動化する一方,他地域への出稼ぎによる母集団からの社会文化的乖離が起った結果,都市農村間の文化的格差も減少し,移住をより容易にする状況が生じた。(2)都市における適応過程:農村部からの移住者は,旧来の都市住民のもつ排他性に直面した結果,都市インフォーマル部門への参入を余儀なくされ,また,都市への定着に際しては,同郷者間の相互扶助が不可欠である。(3)階層間の弁別と社会交渉:凝制親族関係(コンパドラスゴ)によってクスコ市及び周辺農村部に存在する複数の社会階層間に交渉が生じるが,この交渉は非対称的なものであり,階層を観念的に固定する作用ももつ。また,上流階層は,階層内での社会関係の自足をめざし,地域全体の凝制親族ネットワークから独立した社会階層(閉鎖的インディオ共同体)も存在する。 3.経済(1)クスコの市場における女性活動:クスコ市の市場においては,商人のもつ商権が女系を辿って継承されたり,女性商人と女性購買者の間に固定的な顧客関係が成立するなど,女性の卓越した役割を見て取ることができる。(2)クスコ市と周辺農村間の経済ネットワーク:生鮮食料品流通を支配する女性仲買人が存在することが解明される一方,クスコ市が高地農村と海岸の間の物資流通の結節点であることが明らかになった。 4.宗教(1)クスコの民衆カトリシズム:クスコ市においては,民衆カトリシズムと融合したインカ時代のワカ(聖所)崇拝が変容しながらも持続力を保っている一方,盛んに行われるクルス・ベラクイ(聖十字架崇拝)は,都市への移住者の,出身地域差をこえたアイデンティティを形成する普遍のシンボルとなっている。(2)クスコの民間医療と呪術:クスコ市においては民間医療が盛行を示しており,かつ非常に商業化されている。その内容を構成するものは,農村部における地母神信仰や山霊信仰の観念およびそれに関わる儀礼行為の変形したものである。その機能は,都市住民が抱える経済的・社会的問題の解決に対する制度的無能力を前にしての,最後の救済である。(3)カンタにおける聖ロサ信仰:聖ロサ信仰には,公式カトリックの聖ロサ信仰とは別に,土着の諸観念・諸儀礼を取り込んだ地域的な聖ロサ崇拝が平行して存在する。
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