研究課題/領域番号 |
02041106
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
河野 毅 理化学研究所, 宇宙放射線研究室, 研究員 (60211231)
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研究分担者 |
CRAWFORD H.J Spase Science Lab.UC Barkeley
加藤 博 理化学研究所, 研究基盤技術部, 技師
宗像 一起 信州大学, 理学部・物理学教室, 助手 (40221618)
今井 喬 理化学研究所, 宇宙放射線研究室, 技師
松岡 勝 理化学研究所, 宇宙放射線研究室, 主任研究員 (30013668)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1991年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 宇宙線 / 重イオン / 半導体検出器 / 位置検出器 / アイソト-プ / 宇宙観測 |
研究概要 |
宇宙線中に微量に含まれる重イオン成分の元素分布を、広いエネルギ-範囲についてあきらかにすることは、宇宙線の起源や伝播の問題、ひいては宇宙における元素の起源という、最も根元的な物理学の問題に重要な知見をもたらす。とくに元素分布のみでなく、ある元素の中における核質量の分布、即ちアイソト-プ分布を観察することができればより貴重な物理的情報となる。しかし、宇宙空間で重粒子のアイソト-プを精度よく弁別観測することは困難で、世界的にもまだデ-タが出始めたばかりである。 われわれは、日本の高度な半導体技術を生かして開発した、大面積で精度のよい半導体検出器を用いた宇宙線重粒子テレスコ-プを設計・製作し、衛星への搭載準備を進めている。このような高度な技術を駆使した装置は、あらゆる条件を考慮し、その信頼性を確保するためにさまざまな工夫が凝らされている。理論的な計算だけでは追求しきれない、微妙な性能については大型計算機を使った数値シミュレ-ションを繰り返して設計条件を詰めて行く。こうして、最終的に設計・製作された観測装置が、予定通りの粒子観測機能を持っているかどうかを調べるためには、実際にその装置に高エネルギ-の重イオンビ-ムを打ち込み、デ-タを解析して見るしかない。つまり、高エネルギ-重イオンビ-ムを出せる粒子加速器を使って、地上に疑似宇宙を実現して観測を行うのが最も信頼できる手法である。現在日本で最も高いエネルギ-を出せる重イオン加速器は理研のリングサイクロトロンである。炭素、酸素では135MeV/nucがその最高エネルギ-である。実際、このエネルギ-でわれわれの装置の検出器単体の性能評価をする事は可能であるが、総合的にわれわれの必要なエネルギ-は米国のバ-クレ-にあるベバラックという加速器が必要である。 平成2、3年度の各年度の報告にあるように、われわれは初年度ではまず単1エネルギ-のビ-ムに対するテレスコ-プのレスポンスをしらべた。これは、いきなり種々の粒子が混在するビ-ムに当てるよりも、まずテレスコ-プ内の個々の検出器がエネルギ-と核種のわかっているビ-ムに対して予測通りの信号を出すかどうかがまず最初に確かめるべき項目だったからである。そこで1年目は貴重なマシンタイムを無駄にしないため、350MeV/nucの鉄のビ-ムに対する各検出器の信号を綿密に調べるためのデ-タ取得を行った。そのデ-タを詳しく解析した結果、PSD,PIN型検出器およびリチウムドリフト型検出器のいずれもが理論的なエネルギ-損失の計算値と2%以内で合っていることが確認できた。これは、われわれが装置設計のために使用した多くのパラメ-タが、きわめて正確なものであったことを示すものであった。 次に2年目の平成3年11月に再びバ-クレ-を訪れ、ベバラックによる照射実験の最終目的である、元素・アイソト-プ分離機能確認実験を行った。この実験のためには、加速器からの単1エネルギ-・単1核種のビ-ムをタ-ゲットに当て、その中で起きた核反応(核破砕)で出来た種々の元素・アイソト-プをテレスコ-プに照射し、その出力信号から入射粒子の原子番号・質量数が識別できるかどうかを確認することが必要となる。このとき、タ-ゲットに当たった1次粒子はその大部分が核破砕を受けずに通り抜ける。従って、1次、2次ビ-ムの全てをテレスコ-プに入れると、大部分のデ-タが1次粒子のみに依るものとなってしまう。そのため、磁場による運動量分析装置を用い、各粒子のmagnetic rigidityに応じた場所に分散させ、1次粒子の入射を避ける。さらにこのとき、1カ所にテレスコ-プを置いたことにより、入射する粒子は核種ごとにrigidity一定、つまりエネルギ-が一定となってしまう。我々はなるべく広いエネルギ-範囲にわたるデ-タを必要としているのでこのままではそれが出来ない。そこで、テレスコ-プの前に回転するクサビ型の吸収体を置き、連続的な吸収体を置き、連続的な吸収長の変化によって入射粒子のエネルギ-範囲を広げると言う方法をとった。この装置は日本で作製、持ち込んだものである。以上の方法により、我々の装置が元素はもちろん、アイソト-プまで充分に分離・識別できる能力があることを最終的に確認することが出来た。
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