研究課題
国際学術研究
1.ドイツでは、資源の芝しい高度産業国家として、学術研究の果たす役割は重要なものととらえられており、大学の研究能力の向上は大きな政策課題となっている。2.連邦国家であるドイツでは、学術及び高等教育に関して、連邦の有する権限は大学制度に関する一般的原則を定めること(これにより大学大鋼法を制定)、大学の新設及び拡充に際して各州と協力すること、全国的な意義を有する学術研究の設備・計画の促進に関して各州と協力することなどに限定されており、各州が基本的な権限を有している。また、大学における研究の自由という原則やドイツの大学の伝統である研究と教育の統一という原則もからまり、政府の学術政策が直接的に大学における研究に反映するというしくみになっていない。政府は、大学の新設・拡充費の負担やとくに研究助成を通じて大学と結びついている。3.大学は基礎研究の場として、また研究者養成の場として、学術研究の基盤をなすと考えられている。しかし、近年、基礎研究の分野ではマックス・プランク協会の研究所、応用研究の分野ではフラウンホ-ファ-協会の研究所、さらには原子力研究、加速器研究、宇宙研究などの分野における13の大規模研究会など、発的な援助を受ける大学外研究機関の果たす役割が増大し、研究費の面でも大学より優遇されている。しかし、大学における研究は広範な分野を有し、また学際的な研究を行う可能性にも富むことから、大学は大学外研究機関と競争あるいは協力して、自らの研究の質を高めることを求められている。学術審議会は、効率的な研究助成の実施という観点から、新しい研究分野に関して大学外研究機関を新設するのがよいのか、あるいは大学においてその研究を実施することが可能がどうか検討すべきであること、大学の研究重点について既存の研究助成の方式を有効に活用すべきこと、大学と大学外研究機関との密接な協力が必要であることなど、勧告している。4.大学における研究費は、経常的な研究費は州が負担し、特定の課題・プロジェクトに関する研究費は第三者資金により賄うというしくみになっている。ドイツにおいて第三者資金は、企業等から受け入れる外部資金だけでなく、研究者あるいは研究者グル-プがドイツ研究協会(DFG)に申請して審査の上交付される研究費も含めてとらえられている。この第三者資金による研究費の伸び率は、経常的な研究費の伸び率を上回っている。第三者資金においてDFGの占める割合が最も大きい。また、州政府あるいは連邦政府から大学に委託される特定の研究プロジェクトに関する研究費は、全体に占める割合はまだ小さいが、徐々に増えてきている。5.DFGの資金の大部分は連邦と州が負担している。DFGによる研究助成の主要な形態として、一般助成、重点助成及び特別研究領域助成がある。一般助成はDFGの研究助成の根幹をなすもので、個々の研究者が研究課題・計画を作成し、申請して、審査により認められたものに助成が行われる。重点助成は、同協会が研究テ-マを定めた上で公募し、いくつかの研究機関に属する者が一定期間(5年間)共同研究を行うものである。また、特別研究領域助成は、大学が学際的な研究テ-マを設定し、応募するもので、認められると12〜15年の長期にわたって研究が継続される。大学が重点研究領域を定め、協力して研究を進めていくことで、大学の特色が明確になり、また研究費の配分も効率的になると考えられている。6.旧東独地域においては、大学制度の改編が進められているところであり、また、研究の中枢であった科学アカデミ-は解体され、同アカデミ-に所属していた研究所は所在する州の機関となった。現在、学術審議会により、大学も含めた研究機関の審査が実施されており、その審査結果を参考にして、研究機関の整理・再編が行われることになっている。旧制度では、研究の重心が科学アカデミ-に置かれていたが、今後はとくに基礎研究において大学が大きな役割を果たすべきことが検討されている。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)