中華人民共和国における胃癌、肺癌の発生要因についての研究

• 研究課題/領域番号: 02042002
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: がん調査
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 佐々木 隆一郎 名古屋大学, 医学部, 助教授 (80131241)
• 研究分担者: 李 厚文 中国医科大学, 腫瘍研究所, 所長 ; 孫 中行 中国医科大学, 副教授 ; 張 蔭昌 中国医科大学, 腫瘍研究所, 教授 ; 田原 栄一 広島大学, 医学部, 教授 (00033986) ; 藤井 雅彦 〈財〉東京都がん検診センター, 検査科, 科長 ; 下方 薫 名古屋大学, 医学部, 助教授 (10022906) ; 伊藤 宜則 藤田学園保健衛生大学, 医学部, 助教授 (50087665) ; 渡辺 能行 京都府立医科大学, 講師 (00191809) ; 青池 晟 京都府立医科大学, 助教授 (00117871) ; 土橋 康成 京都府立医科大学, 病院病理部, 助教授 (50106390) ; 青木 國雄 愛知県がんセンター, 総長 (60073102) ; SUN Zhong-Xing First Hospital, China Medical University ; ZHANG Yin-Chang Cancer Institute, China Medical University
• 研究期間 (年度): 1990
• 研究課題ステータス: 完了 (1990年度)
• 配分額: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円); 1990年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
• キーワード: 胃がん / 肺がん / 患者対照研究

研究概要

癌の発生要因、発生機序についてはかなり明らかになったが、いまだ不明の部分も少なくない。特に発癌頻度や癌の病態が時代の経過とともに変化することも、この解明を遅らせている原因のひとつである。中国では、人々の生活習慣が日本より単純であり、癌の発生が40歳代から急増しており、これは日本の1930ー40年代ににている。この研究は、日本、中国両国の癌の発生要因、発生機序を比較検討し、発癌機序を解明する手がかりを得、予防対策に資することを目的に行ったものである。
本年度に行った主な研究は、胃がんと肺がんにたいする患者対照研究である。調査は、中国東北部の遼寧省で行った。遼寧省では、田舎部は農業・漁業を主産業としており、都市部は石油化学、重金属などの工業を主産業とする地域である。この地域では、田舎部では胃がんが、都市部では肺がんが多発している。そこで本研究では、田舎部では胃がんの、都市部では肺がんの患者対照研究を行った。主な研究結果は以下に示した通りである。
1.胃がんの発生要因についての患者対照研究
中国東北部の農村地帯で、胃がんの発生に関連している主に食要因を明らかにする目的で患者対照研究を行った。検討に用いた胃がん患者は、この域地で一年間に新たに診断された患者288人(男 226人、女62人)である。患者の診断は、主に胃内視鏡による細胞診断あるいは術後手術標本の病理診断によって行われた。対照は、患者と性・年齢をマッチさせ、同地域に居住する一般住民から患者1人に対して2人の割合で無作為に選んだ。解折はマッチドペア法による相対危険度(RR)を算出した。また、多変量解折にはConditional Loqistic Regression Modelを用いた。
患者と対照を比較し、人種、教育歴、婚姻状況、職業状態を考慮してみると、この地域における胃がんの発生要因として不規則な食事時間(RR=1、7)、野菜の漬物の頻回摂取(RR=1、6)、塩魚の頻回摂取(RR=1、9)など独特の食習慣が関連することが示唆された。更に、癌の家族歴(RR=3、4)、食事中の不愉快な心理状態(RR=3、3)、普段のいらいらした気分(RR=1、9)との関連もみられた。
2.肺がんの発生要因についての患者対照研究
中国東北部の大都市(沈陽市)で、女性の肺がん発生に関連する要因を明らかにする目的で、患者対照研究を行った。患者は1988年1年間に沈陽市の病院で新たに診断された女性肺がん患者100人である。100人の肺がん患者の診断は94人については病理診断、6人は胸部レントゲンで行った。病理組織の判明した94人の内訳は、扁平上皮癌30人、小細胞癌33人であった。対照は、患者と性・年齢の他、居性地域を一致させ、患者1人に対して2人の割合で、一般住民の中から無作為に選択した。解折に用いた資料は、保健婦による面接法によって収集した。解折方法は、胃がんの場合と同様である。今回は女性の肺がん患者を選び、喫煙以外の要因について注目して検討を行うことを試みたが、喫煙がもっとも強い要因として検出された(RR=2、1)。喫煙者でも、若い年齢で開始した者が、喫煙本数が多い者が、より強い危険度を示す傾向がみられた。この結果を病理組織別にみると、扁平上皮癌喫煙との関連が強いことが示唆された(RR=2、9)。喫煙の他には、癌の家族歴について興味深い結果を得た。すなわち、病理組織別に検討すると、腺癌では癌の家族歴との関連を示唆する結果が得られた(RR=3、2)。この他、中国の他の地域での肺がんの患者対照研究で示されているような、家庭での暖房方法、料理用熱源などとの関連についても検討を行ったが、今回の結果では明確な関連は得られなかった。

研究成果

• [文献書誌] 林 恵芝 他: "胃癌高率区居民血清学検査劫〓観察及基与低率区者対北" 中国医科大学学報. 19. 37-39 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 白 希文 他: "庄河新民胃癌高、低率区志願者胃鏡検査的胃粘膜所見" 中国医科大学学報. 19. 40-42 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 伊藤 宜則 他: "健常成人の血清 βークリプトキサンチンレベルへの日常影響要因" 医学と生物学. 121. 129-131 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Yoshinori Ito et al.: "Serum concentrations of carotenoids,retinol,and αーtocopherol in healthy persons determined by highーperformance liquid chromatography" Cliniaca Chimica Acta. 194. 131-144 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] YinーChang Zhang et al.: "Comparative etiologic study on stomach cancer in North China and North Japan" Epidemiology & Prevention of Cancer. 150-155 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Ryuichiro Sasaki et al.: "The relationship between serum betaーcarotene level and intake frequency of greenーyellow vegetables and some other factors" Epidemiology & Prevention of Cancer. 156-162 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Lin Hui-Zhi: "Change of dietary habits in inhabitances and serum carotenoids levels in high risk area of stomach cancer" Journal of China Medical University. 19. 37-39 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Bai Xi-Wen: "Gastroscopical findings of gastric mucosa in the volunteers at Zhuanghe and Vinmin counties with high and low incidence of gastric cancer" Journal of China Medical University. 19. 40-42 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Ito, Yoshinori: "Relation factors to serum levels of beta-criptoxethantin of healthy adults" Medicine and Biology. 121. 129-131 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Ito, Yoshinori: "Serum concentrations of carotenoids, retinol, and alpha-tocopherol in healthy persons determined by high-performance liquid chromatography" Chimica Acta. 194. 131-144 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Zhang Yin-Chang: "Comparative etiologic study on stomach cancer in North China and North Japan" Epidemiology & Prevention of cancer. 150-155 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Sasaki, Ryuichiro: "The relationship between serum beta-carotene level and intake frequency of green-yellow vegetables and some other factors" Epidemiology & Prevention of Cancer. 156-162 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より