研究課題/領域番号 |
02044008
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
絵面 良男 (1991) 北海道大学, 水産学部, 教授 (80001618)
木村 喬久 (1990) 北海道大学, 水産学部, 教授 (60001583)
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研究分担者 |
西澤 豊彦 広島大学, 生物生産学部, 助手 (10222184)
田島 研一 北海道大学, 水産学部, 助教授 (80002252)
HEDRICK Ron カリフォルニア大学, 獣医学科, 助教授
WINTON James アメリカ合衆国野生生物局, 国立魚類研究所・ウイルス部門, 主任研究員
FRYER J.L. オレゴン州立大学, 微生物学科, 教授
吉水 守 北海道大学, 水産学部, 助手 (40122915)
木村 喬久 北海道大学, 水産学部, 名誉教授 (60001583)
FRYER John L. Department of Microbiology, Oregon State University
絵面 良男 北海道大学, 水産学部, 助教授 (80001618)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
1991年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1990年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
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キーワード | VHSV / サケ科魚類 / ラブドウイルス / サブユニットワクチン / 抗ウイルス物質 / 防疫対策 / 紫外線感受性 / 消毒薬 / ラドドウイルス / IHNV / HRV / 病原性 / ELISA |
研究概要 |
本研究は1988年秋アメリカ合衆国ワシントン州の太平洋岸の孵化場において分離されたサケ科魚類の国際重要伝染病、ウイルス性出血性敗血症(VHS)の原因ウイルスの米国における分布状況の把握とわが国のサケマス類に対する病原性を検討すると共に、その効果的防疫法の確立を目ざして実施した。 先ずわが国およびワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州のサケ科魚類採卵親魚の魚類病原ウイルス保有状況の調査を行った。VHSVは1990年にもワシントン州の2カ所の河川に回帰した採卵親魚の体腔液から分離され、さらにアラスカ州のタラ病魚からも分離された。しかしわが国のサケ科魚類採卵親魚およびオレゴン州、カニフォルニア州のサケ科魚類からは分離されなかった。 次いで本ウイルス感染症の診断技術の開発を試み、従来実施されているウイルス分離およびウイルス抗原検出法に加え、ELISAによる血中抗体価の測定法を検討した。サケ科魚類のイムノグロブリンに対する抗血清を作成し、サケ、カラフトマス、ニジマスに対する反応性を確認し、感染耐過魚および採卵親魚の血清について魚類病原細菌ならびにウイルスに対する抗体の検出を試み、本ELISA法を用いてサケ科魚類の血清中に存在する抗体の検出が可能であることを明らかにし得た。 さらに魚類ラブドウイルスの構造蛋白を比較し、VHSウイルスと近縁のIHNV、HRVを構造蛋白の電気泳動像から区別し得ること、従来構造蛋白のうちG蛋白がこれらのウイルスを区別するに重要であると考えられてきたが、今回G蛋白の他にM_1蛋白も重要な働きをし、特にウイルスの感染性に重要な役割を担っていることが明らかになったことから、サブユニットワクチン作成に際し重要な知見が得られた。 本ウイルス感染症の防疫対策を検討するにあたり、まず各種消毒薬および紫外線のVHSウイルス不活化効果の検討を行なった。VHSVを含め供試した魚類病原ラブドウイルスは市販の消毒薬で十分不活化されることが明らかになった。しかし有機物の存在によって効果が低下する消毒薬があり、現場での効果的使用法の検討が必要となった。一方供試ウイルスの紫外線感受性はID_<99>が2.0〜4.0x10^3μW・sec/cm^2といずれも高く、市販の紫外線殺菌装置を用いての不活化が可能であった。つぎにVHSウイルスをはじめ近縁の魚類ラブドウイルスIHNV、HRVを対象に高食塩濃度下および未受精卵内における生存性を検討した。供試した3種のラブドウイルスはいずれも7.5%食塩存在下で1カ月以上安定であった。しかし未受精卵内では2週間後には検出できなくなり、IHNVと同様卵内に進入しての経卵感染の可能性は否定された。また魚類生息環境や魚類の消化管内細菌の中に、抗ウイルス物質産生細菌が存在することが明らかになり、これらを積極的に活用し、ラブドウイルス病の防疫に役立てる試みを行い、抗ウイルス物質産生腸内細菌を経口投与後、ウイルス攻撃を行ったが、この場合対照群と試験群に有為の差を認めることができた。 さらに今回の北米産サケ科魚類由来VHSウイルスのわが国のサケ科魚類およびヨ-ロッパ産ニジマスに対する病原性を検討した。ヨ-ロッパのニジマスから分離されたVHSV(Fー1株)はニジマスに対し強い病原性を示したが、北米株は北アメリカ産ギンザケ、マスノスケ、ニジマスおよびわが国産サケ、カラフトマスに病原性を示さなかった。このように北米由来分離株はわが国のサケ科魚類をはじめ、北米産サケ科魚類にも病原性を示さないことが明らかになり、今後の防疫対策を考える上で、検査体制の充実が急務となった。幸い本共同研究を通じ、ウイルス検出法に加え、抗体検出法を確立され、さらに経卵感染も否定されたことから、日米双方における採卵親魚の検査体制および連絡体制の整備と今回明らかになった卵さらには施設の効果的な消毒の実施により本ウイルス感染症は防除し得ると考えられる。しかしVHSVおよびIHNVは高濃度の食塩に耐性を有し、さらに冷凍にも耐えることから塩蔵冷凍魚および魚卵と共に特ち込まれる可能性もあり、養魚現場でのこれら製品の取扱いには十分な配慮が必要となった。
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