研究概要 |
本研究は,平成2年度の単年度で行われた,この間,2名の研究者を海外を派遣し,3名の研究者を国内へ招聘し,宇宙用双腕知能ロボットの共同研究を実施した.以下,その概要,総括,今後の展望について述べる. 1.研究者の派遣 (1)アメリカ合衆国への派遣 亀山充隆をアメリカ合衆国カリフォルニア大学サンタバ-バラ校に派遣した.別件で渡米中の内山勝もこれに合流し,同校のエドアルド・バヨと中村仁彦を加えて会合をもった.会合では,まず,内山勝が共同研究の趣旨と,後日仙台で開催する国際ワ-クショップの要領について説明した.そして,早速,宇宙ロボットの議論に入った.まず,内山勝が彼の研究室で開発した双腕フレキシブルロボットについて説明し,エドアルド・バヨがその構造に関する質問を行った.その結果,彼の開発したフレキシブルア-ムの逆運動学,逆動力学のこの装置への適用可能性が検討され、後日東北大学を訪問して詳細を検討することとした.会合後,エドアルド・バヨの研究室と中村仁彦の研究室を見学し,意見交換を行った. (2)フランスへの派遣 内山勝をフランスモンペリエ第2大学に派遣した.当地では,まず,ピエ-ル・ドシェの双腕ロボットの実験室を見学した.ついで,この双腕ロボットのプロジェクトに参加している数名の大学院生を含め,研究打ち合せを行った.そこで,過去に内山勝とピエ-ル・ドシェが開発した協調制御理論に未解決の問題が存在することが指摘され,今後の課題とした.また,軽量,高剛性の宇宙ロボットを設計するときに有用な機構となる並列リンクロボットについて,その研究を実施中のフランソワ・ピエロと意見交換を行い,論文の共同執筆,および今後の共同研究についての打ち合せを行った.論文はその後完成し,現在論文誌に投稿中である. 2.研究者の招聘 ピエ-ル・ドシェ,エドアルド・バヨ,中村仁彦を招聘し,内山勝,亀山充隆を含む全員で宇宙用双腕知能ロボットに関する研究打ち合せを行った.と同時に,日本ロボット学会主催の国際ワ-クショップ(International Workshop on Dual Arm Intelligent Robotics in Space)を東北大学において開催した.研究打ち合せでは,とくにエドアルド・バヨが,内山勝の研究室で開発したフレキシブル双腕ロボットについて関心を示し,今後このロボットの制御ソフトウェアの開発に協力することとした.ワ-クショップでは,本研究組織の全員の研究者がそれぞれの立場より最新の研究成果を発表した.本ワ-クショップは,日本ロボット学会第8回学術講演会の前日に,同じ場所で開催されたため,全国よりおよそ40名の参加者があり,盛会の内に終了することができた.本ワ-クショップの会議録は,研究成果印刷物として製本し,本報告書に添える. 3.総括と展望 本研究は,単年度で,短期間ではあったが,これまでの研究交流の積み重ねがあったため,論文の共同執筆,国際ワ-クショップの開催など多くの成果をあげることができ,有意義に終了することができた.これらの成果の中で,今後の共同研究に発展する可能性のある主な成果は以下の通りである. (1)フレキシブルロボットア-ムのモデリングと制御 本研究を行った期間内に,この問題の研究が内山勝の研究室において急速に進展した.その結果,エドアルド・バヨが内山勝の研究に協力できる問題が明確となり,今後の共同研究が可能となった. (2)並列リンクロボット モンペリエ第2大学で行った共同研究は,新しい機構の並列リンクロボットの開発の基礎となった.今後,このロボットの共同開発の進展が期待できる.また,このロボットの制御に亀山充隆が開発したVLSIの応用が期待できる.
|