研究課題/領域番号 |
02044015
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡田 安弘 東北大学, 理学部, 助手 (20212334)
|
研究分担者 |
FRAMPTON Pau ノースカロライナ大学チャペルヒル校, 物理学及び天文学科, 教授
|
研究期間 (年度) |
1990
|
研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
|
キーワード | ひも理論 / 重力 / P進数 / 統一理論 / クォ-ク質量行列 / フレ-バ-混合 |
研究概要 |
ここでは、一方では超ひも理論の数学目的基礎について研究し、他方では、標準模型とその拡張を含め、広い意味での統一理論に関する研究を行った。 1.ひも理論に関しては、P進体上のひも理論の研究を続けた。ひも理論、特に超ひも理論は、重力を含む統一理論として最も有力な理論であるが、ひも理論でどのような真空を選ぶか、どのように超対称性を破るか、というような問題に答えて、現実的な模型と結びつけるためには、ひも理論の非摂動論的な理解が必要である。そのためには、ひも理論の全く新しい数学的構造を明らかにすることが求められている。 P進体上のひも理論は、このような構造を明らかにする可能性のある理論として提案され、フランプトンと岡田が中心になって、精力的に調べてきた。現在までに、P進体上のひも理論のトリ-振幅の解析を行い、それが非局所スカラ-場理論と同等であること、そのスカラ-場の解析により、ひも理論の非摂動論的真空の存在が示唆されること、P進体ひも振幅の無限積をとることによって、通常のひも理論との関係をつけることが考えられること、また一般にP進体上の場の理論を径路積分の方向で定式化できること等を行ってきた。 今回は、特にP進体上のひも理論をより自然な形で定式化する方法として、ブルハットーティツ・トリ-上の場の理論を考察した。ブルハットーティツ・トリ-は、通常のひも理論で分世界面に対応する構造で、自然にP進ひも理論の持つ階層的構造を含んでいる。これに基づいて、ひも理論のル-プ振幅について考察することができる。これからの課題としては、通常のひも理論とP進体ひも理論の関連をル-プレベルで考えること、階層構造を持った系の模型として、ブルハットーティツ・トリ-上の場の理論の応用を考えること等である。 2.広い意味での統一理論に関しては、フランプトンと岡田は共同で、クォ-クの質量行列とフレバ-混合の問題について考察を行った。 3世代の標準模型では、クォ-クの質量行列に関しては、3つの角度変数、1つのCPを破る位相と6つの質量の固有値の10個のフリ-パラメ-タ-が存在する。これらの値は、標準模型の範囲内では説明できないが、逆にこれらに何らかの関係が存在するとすれば標準模型を超える物理に関する手がかりを与える可能性がある。ここでは、このような立場から、アップ及びダウンタイプクォ-クの質量行列にある単純な対称行列を考えることにより、小林・益川行列の2つの成分lVcbl、lVublとアップタイプクォ-クの3つの質量mu,mc,mtの間の新しい関係式を導いた。この関係式は、実験的に不確定性の大きいトップクォ-クの質量と、lVublの間の関係式と考えることができる。たとえば、トップクォ-クの質量が100〜200Gevの範囲で、lVublは0.007〜0.005に対する。トップクォ-クの発見やBメソンの崩壊のより詳しい測定によって、この関係式の成否は確かめることができる。もしも、よく成立しているならば、クォ-クの質量行列を通じて、標準模型を超える統一理論に対する重要な情報を得ることができる。これからの課題としては、CPを破る位相をうまく取入れること、はじめに仮定した質量行列を自然に導くように統一理論を考えることがあげられる。 フランプトンは、また、柳田勉と共同で、標準模型を超える一つの試みとして、重いフェルミオンを含むサ-ク模型での強い相互作用によるCPの破れの問題を考えた。このような模型で、ペッチャイ・クイン機構を考えることにより、軽いアクシオンなしに、強い相互作用でのCPの問題を解決することができる。また、この模型は、テクニカラ-の考え方と通常のヒッグス機構とを1パラメ-タ-でつなぐような理論になっていることを指摘した。
|