研究分担者 |
P.ORIOLI :ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
R.P.DUM ニューヨーク州立大学, 医学部, 助教授
B.M.LI ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
J.E.HOOVER ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
G.A.BORTOFF ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
S.Q.HE ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
M.T.LU ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
P.L. STRICK ニューヨーク州立大学, 医学部, 教授
稲瀬 雅彦 岡崎国立共同研究機構生理学研究所, 助手 (80249961)
相沢 寛 (相澤 寛) 米国国立眼研究所, 客員研究員 (40222434)
徳野 博信 岡崎国立共同研究機構生理学研究所, 助手 (40212071)
嶋 啓節 東北大学, 医学部, 助手 (60124583)
虫明 元 東北大学, 医学部, 助手 (80219849)
蔵田 潔 東北大学, 医学部, 助教授 (30170070)
BORTOFF G.A. Same as above
HE S.Q. Same as above
LU M.T. Same as above
STRICK P.L. State University of New York, Upstate Medical Center
HOOVER J.E. Same as above
DUM R.P Same as above
LI B.M. Same as above
HALSBAND U. デュッセルドルフ大学, 医学部(ドイツ), 講師
LAIHINEN A. トゥルク大学, 医学部(フィンランド), 助教授
BORTOFF G.A. ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
HE S.Q. ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
LU M.T. ニューヨーク州立大学, 医学部, 講師
STRICK P.L. ニューヨーク州立大学, 医学部, 教授
HOFFMAN Donn New York 州立大学, 医学部, 助教授
DUM Richard New York 州立大学, 医学部, 助教授
STRICK Peter New York 州立大学, 医学部, 教授
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研究概要 |
東北大学グループによる,神経生理学的研究を主体とした脳細胞活動特性の解析と,米国ニューヨーク州立大学グループによる免疫組織化学的手法やトレーサー法を主体とする研究を有機的に結び付け発展させる協力態勢がとられ,以下の如く研究成果が得られた。 (1)帯状回運動野における高次運動野の所在決定とその特性の解析。 霊長類の大脳帯状回について共同実験を行った。まず生理学的実験で,運動に伴う活動特性を明らかにし,次にトレーサー法による組織学的研究で微細構築を明らかにした。それによって形態学的・生理学的両面から帯状回運動野を定義づけることができた。 (2)新しい高次運動領野の発見。 大脳の一次運動野前方の内側は,徒来補足運動野と呼ばれてきた。この部位は二次運動野ともいわれ,研究が進められてきた。ところが今回の研究によって,それよりも更に前方に,もうひとつの新しい運動領野の存在することが明かとなった。その部位の細胞活動の特性が調べられ,さらにその領野が脳内に占める位置の概要が免疫組織学的に明らかになった。 (3)補足運動野の機能的可変性。 大脳皮質の個々の領野の機能的特性は,生後発達によっていったん形成された後は固定的であると一般に考えられてきた。しかし大脳補足運動野に於て,成体の霊長類に於ても機能的可塑性は存在し,外的条件や脳内の変化に対応し得ることが明らかになった。 (4)大脳基底核と補足運動野の連絡。 大脳基底核と補足運動野の両方について,生理学的検討を充分行い,正確な部位同定後に,蛍光物質とはHRP酵素による二重標識法によって,組織学的検索を行った。その結果,大脳基底核の出力部である淡蒼球が視床へ投射する線維の終止部位と,補足運動野に出力を送る視床細胞の局所部位をそれぞれ正確に検出し,両者の空間的分布が大部分一致する事を示すことができた。 (5)動作の順序制御に関与する領野の研究。 動作手順の調節を含むような複合的運動を行うときに,それが眼前に存在する視覚情報によって誘導されるばあいには運動前野を主として使い,それをいったん脳内に取入れた記憶情報とし,それにもとずいて運動を行う際には補足運動野をより多く使うことを実験的に証明することができた。 (6)HSV-1ウイルスの免疫組織化学的応用による脳回路の解析 HSV-1ウイルスは,その異種株の特有の性質があり,神経細胞へのとりこまれ方を異にすることが最近知られるに至った。すなわち細胞体から軸索突起端へ向う順向性,その逆方向の逆向性の両方向に,それぞれシナプス接続部を乗り越えて移動していく。この現象を応用し,HSV-1ウイルスの異種株に対する抗体を開発することに成功した。次に生理学的手法によって,サルの複数の運動領野を同定した。次に無菌的外科手術によって,特定のウイルス種をその部位に注入した。その後一定の生存期間後に,特異抗体を用い,免疫組織化学的方法で陽性細胞の検索を行った。その結果として,まず一次運動野の細部にそれぞれ投射する細胞が,視床を経由し,淡蒼球の内節の特定部位の存在することが判明した。この発見は,徒来の脳の回路網の概念を変えるものである。次に補足運動野と運動前野についても同様の実験を行い,大脳基底核系と小脳系入力が,それぞれ大脳皮質の運動諸領野へどのように分布するかを明らかにするデータが次々と得られた。 (7)化学伝達物質局所注入による運動前野の一過性機能脱失の研究 ギャバとそのアゴニストであるムシモルは,大脳に於て強い抑制性作用を有する。この物質を運動前野の局所に微量投与する事によって,一過性の機能脱失効果を得ることができた。この研究から,運動前野内部での機能分化のようすが具体的に明らかになった。 結論として,神経生理学的研究を専門領域とする東北大学グループと,組織学的研究を新手法で進めつつあるニューヨーク州立大学グループの研究者が企画した共同研究は,両者の綿密な研究企画にもとづいて実施され,研究者の派遣と招へいを効率的に行うことによって,極めて順調に推移し,予期された以上の成果が得られた。
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