研究分担者 |
PETER Boomga アムステルダム, アジア研究センター(CASA)/王立言語・地理・民族学研究所(K, 研究員/所長
FRANS Husken アムステルダム, アジア研究センター(CASA)/ネイメーヘン大学, 研究員/教授
DJOKO Suryo ガジャマダ大学, 農村地域開発研究センター/文学部, 研究員/学部長
MUBYARTO ガジャマダ大学, 農村地域開発研究センター/経済学部, 所長/教授
水野 広祐 アジア経済研究所, 研究員
田中 学 東京大学, 農学部, 教授 (70012028)
MUBYARTO ガジャマダ大学, 農村・地域開発研究センター(インドネシア), 所長
BOOMGAARD Pe アムステルダム, アジア研究センター, 研究員
HUSKEN Frans アムステルダム, アジア研究センター, 研究員
SURJO Djoko ガジャマダ大学農村, 地域開発センター, 研究員
MUBYARTO ガジャマダ大学農村, 地域開発センター, 所長
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研究概要 |
本研究は,インドネシアの中部ジャワ.プマラン県チョマル地方で1903-05年にオランダ人によって行われた農家経済調査の膨大なデータを活用し,同じ地域の現状に関する類以の調査と,オランダ,インドネシアの両国での史料調査を,日本,インドネシア,オランダの3国の専門家の共同研究として実施することにより,この地域の長期間の社会経済変容の過程を,明らかにしようとしたものである。具体的には,平成2〜4年の3年度にわたり,それぞれ対象と方法を異にする,次の7つの作業がこの目的のために実行された。 (1)1903-05年の調査データをパソコン・データベースに入力し,比較分析のベースラインを構築する作業(平成2年初めまでに前もって実施)。 (2)上記地域での農家経済調査(平成2年9〜10月)。 (3)オランダの公文書館での史料調査(平成2年4〜8月)。 (4)上記地域での,村と家族の歴史についての,人類学的手法による聞き取り調査(平成3年6〜8月)。 (5)インドネシアの公文書館での関連史料の収集(平成3年7〜8月)。 (6)独立革命期(1945〜50年)を中心とする,この地域の政治社会史の聞き取調査(平成2〜3年)。 (7)調査成果全体の総括セミナー(平成4年8月にジョクジャカルタ市のガジャマダ大学で実施)。 以上の調査研究の成果は,とりあえず次のように要約される。 上記(1)によって得た約90年前のデータと,(2)によって得た現在のデータの比較からは,人口の増加にともない農家の平均経営規模(田畑面積)が著しく縮小したこと,しかし同時に,田畑所有規模の相対格差もまた全ての村で増大し,土地なし世帯の比率も上昇したことが明らかになった。格差の増大は,かつて存在した耕地の村落共有制の消滅と深く関連している。他方,農業外就業機会が大きく拡大し,幹線道路沿いの村々では,世帯の富裕度と土地所有規模の相関関係が崩れていることも明らかになった。 (2)と(5)の史料調査からは,18世紀末からの植民地化の進行にともなうこの地域の商業的農業生産の展開と,開墾による耕地の拡大と人口の増加過程が詳細に明らかにされた。 (4)の村落史・家族史の人類学的調査からは,村長など農村エリート層が村の草分けの系譜から出自し,社会全体の変化にたくみに適応しながら,今日まで支配的階層としての地位を継持しつづけていることが,具体的事例にもとづいて明らかにされた。 (6)のチョマル地方の政治社会史の聞き取り調査からは,植民地支配末期からの農村社会の構造変動,とくに耕地共有制の弛緩,解体にともなう村落支配秩序の動揺が,この地方の独立革命期の政治変動の社会的背景を成すことが,明らかになった。 (7)の総括セミナーには調査チームの全メンバーの他,関連諸分野の専門家,県知事以下の現地地方政府幹部など計約60名が出席し,各作業の成果を要約した計13本のペーパーが提出されて活発な討論が交わされれた。 上記ペーパーを,各自が修正・加筆する作業を現在進めており,日本語,英語,インドネシア語の3種類の最終報告書にまとめ,刊行することが今後の課題である。うち日本語版は,平成5年度内に東京大学東洋文化研究所から刊行の予定である。なおインドネシア語版は,現地関係機関の協力を得て,翻訳,編集作業を行い,ガジャマダ大学から刊行(市販)することを企画している。これについては,平成6年度の科学研究費研究助成果公開促進費の助成を申請する予定である。
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