研究課題/領域番号 |
02044049
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大島 博幸 東京医科歯科大学, 医学部・泌尿器科, 教授 (60013934)
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研究分担者 |
那 彦群 北京医科大学, 副教授
郭 慶禄 北京医科大学, 教授
〓 方六 北京医科大学, 教授
木原 和徳 東京医科歯科大学, 医学部泌尿器科, 助手 (40161541)
後藤 修一 東京医科歯科大学, 医学部泌尿器科, 講師 (30143580)
福井 巌 東京医科歯科大学, 医学部泌尿器科, 助教授 (90014232)
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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キーワード | 日中共同研究 / 尿路悪性腫瘍 / 術前化学療法 / 尿路性器先天異常 / Urogenital cancer / Urogenital anomaly |
研究概要 |
泌尿性器疾患のうち悪性新生物、先天異常については、その特性と治療効果の研究に際しては母集団が大きく、したがって医療の集約している状況が適していると考えられる。この観点より年平均入院患者数が400人にのぼる北京医科大学泌尿器科との共同研究を行ったのでその平成2年度の成果につき報告する。 まず悪性新生物についてであるが、進行性尿路性器腫瘍のうち、膀胱癌と前立腺癌について述べる。これらの疾患では現在手術療法のみでは不十分であり、化学療法や放射線療法を含めた集学的治療が必要とされている。特に化学療法については近年シスプラチンを基礎にした治療で一定程度の効果を認めるとの報告が多くみられるようになった。今回はこの化学療法についてその近接効果を中心に評価を試みた。 1)膀胱癌 遠隔転移のない浸潤癌、新鮮例を対象とし、術前治療として全身化学療法(いわゆるMーVAC療法)2コ-ス、あるいは抗癌剤の動脈内注入療法(動注療法)を2コ-ス行い、遅もにエコ-やCTによる画像評価と膀胱全摘の手術材料による組識学的な効果判定を行った。動注療法はシスプラチン100mg/m^2、THPアドリアシン30mg/m^2を少量のアドレナリンとともに内腸骨動脈より注入した。動注例は8例あり画像上消失はしないものの腫瘍の縮小効果を認めたPR例が8例であり、同時にこれら全例で組識学的に癌細胞は残存するものの広範な壊死を認めた。MーVAC例は2例あったが画像上の縮小はなく組識学的にも軽度の細胞変性を認めただけであった。副作用としては動注例で全例に吐気、嘔吐などの消化器症状がみられ、3例において動注2コ-ス後白血球が3000以下になった。MーVAC例では1例で白血球が3000以下となった。消化器症状として口内炎、吐気などをみたが手術前には回復した。以上より、動注療法では画像上、あるいは組識学的にも原発腫瘍の縮小効果が見られたが、MーVAC療法では縮小効果が見られなかった。後者については症例数が少なく現時点で効果の有無の判定は難しいと考えられる。一方、MーVAC療法では術前治療として2コ-ス行うとすると2か月の入院期間の延長が必要となり、中国においてはこの点でやや問題があると考えられた。 2)前立腺癌 骨転移を有する進行性前立腺癌新鮮例を対象とし、除睾術単独と除睾術+化学療法(IFAP療法:アイフォスファマイド、フルオルウラシル、アドリアシン、シスプラチン)での治療効果を比較することが目的である。この研究はその後の癌再燃までの期間の比較、再燃後のエストロゲン療法の効果などを解析するものであり、今回は観察期間も短く除睾術の効果としてしか評価できなかった。症例は7例あり、除睾術でいずれも疼痛の緩和、腫瘍マ-カ-値の低下をみたが、これは一般的に認められている効果と言えよう。巨大なリンパ節転移をみた1例では除睾後の腫瘍マ-カ-値の減衰がIFAP療法により更に加速され化学療法の近接効果としての有効性を示唆するものと考えられた。 3)先天異常 北京医科大学泌尿器科の86年度以降の統計では入院患者は年平均400人であり、当科のそれは350人であった。中国では、泌尿性器系の先天異常は、入院患者の8.2%を占めており、当院のそれは8.0%でありほぼ同頻度であった。停留精巣がもっとも多く先天異常例の37%を占め年平均33例(当科34%、年平均13例)であり、これもほぼ同値であった。次に多いのは尿道下裂であり20%、年平均17例(当科15%、年平均6例)とその頻度もほぼ同値を示した。一方極めて稀な先天異常として、膀胱外反症、それの軽症例と考えられる尿道上裂が年1ー2例中国側では登録されているが、当科では全くみられなかった。以上より、入院手術の必要な泌尿器科先天異常疾患の入院患者に占める比率は日中両国ともほぼ同程度であり停留精巣や尿道下裂がその主体であることにも差は見られなかった。
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