研究課題/領域番号 |
02044050
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
澤岡 昭 東京工業大学, 工業材料研究所, 教授 (40029468)
沢岡 昭 (1991) 東京工業大学, 工業材料研究所, 教授
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研究分担者 |
HUDEPOHL A. ミュンヘン工科大学, 航空宇宙工学研究所, 研究員
IGENBERGS E. ミュンヘン工科大学, 航空宇宙工学研究所, 教授
田村 英樹 東京工業大学, 工業材料研究所, 助手 (30188437)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1991年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1990年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | デブリス / 超高速衝突 / 防護構造 / 宇宙基地 / 衝突シミュレ-ション / バンパ- / プラズマ加速器 / プラズマガン / 宇宙ステ-ション / 超高速度 |
研究概要 |
1996年に打ち上げが開始される国際宇宙ステ-ションは地球低軌道に飛翔するデブリスや微小隕石の衝突による危険にさらされている。これらの衝突から宇宙ステ-ションを防護することは緊急の課題である。デブリスや微小隕石の衝突速度は秒速20kmにも達するものであり、防護構造の開発のためには、この速度でモデループロジェクタイルを衝突させることができる発射装置の開発が必須である。本国際学術研究の分担者の一人である、ミュンヘン工科大学E.Igenbergs教授は微小プロジェクタイル発射用プラズマガンの発明者である。彼は金属プラズマの高速流を使ってガラスビ-ズを加速することによって、直径100μmのガラスビ-ズを秒速20kmに加速することに成功して、著名になった研究者である。100μmまでのデブリスや微小隕石の衝突に対する防護技術はほぼ確立しているが、宇宙ステ-ションに対しては1mmまでのものが当面の研究の対象になっている。近年、計算機によるシミュレ-ション技術が著しい進歩をとげている。しかし、100μm(0.1mm)で得られた実験デ-タを1mmに延長することには相当の無理が生じている。同じ速度で比較すると100μmと1mmのモデル球のもつ運動エネルギ-は、前者は後者の1000分の1であり、単なる相似関係は成立し難い。1mmのプロジェクタイルを秒速20kmに加速できるシミュレ-タ-の開発が望まれている理由がここにある。 本プロジェクトではIgenbergs教授が発明したプラズマ加速機を基本として、東京工業大学で電気回路とプラズマ圧縮コイルの改良を行った。ミュンヘン工科大学のチ-ムは主に計算機シュミレ-ションによるプラズマ加速機の最適パラメ-タ-を算出することを担当した。東京工業大学で使用したシステムの回路パラメ-タ-は最大エネルギ-300kJ、充電電圧10kV、電気容量6mF、インダクタンス57nH、抵抗3.3mΩであった。このシステムを使用して500μmのガラスビ-ズを秒速15kmに加速することに成功した。この値は世界最高水準のものである。 デブリスや微小隕石の衝突からの防護のためには、二重シ-ルド構造が最も優れたものである。これは主壁から数mm〜数cm離して、バンパ-板を設置する方法である。宇宙構造物は出来るだけ軽量で、コンパクトに設計されなければならない。このためにバンパ-板は薄く、低比重のものほど好ましい。デブリスの衝突によってバンパ-板をデブリスが貫通した場合、破片が相当の速度で主壁に衝突する。この時の損傷を軽減するためには、破片が微粒子のように粉砕され、広角度で広がる事が望ましい。主壁単位面積当たりが受ける負荷が減少するからである。単位面積当たりの質量が一定になるよう厚みを調整した二層構造をもつバンパ-に対するガラスビ-ズの衝突試験を行った。二層バンパ-は衝撃インピ-ダンスの小さなアルミニウム合金(2024)と大きな銅又は窒化アルミニウム・セラミックスを組み合わせたものである。前面(宇宙ステ-ションの外側の面)に低インピ-ダンス材、後面に高インピ-ダンス材を組み合わせたバンパ-板が優れていることが本研究より明らかになった。衝突によって発生した衝撃波が第一層と第二層との境界で反射して、主壁と反対方向にエネルギ-の散逸があるからである。第二層材料として銅と窒化アルミニウムを比較した場合、後者のほうが主壁に対する損傷が小さいことが分かった。窒化アルミニウム板として、IC基板用多結晶セラミックス板を使用した。 以上の結果を総合すると、アルミニウム合金とセラミックスの組み合わせによる二層構造バンパ-がデブリスバンパ-として優れていることが明らかになった。しかし、本国際学術研究によって実施された研究は定性的なものであり、今後、定量化が緊急の課題である。国際スペ-スステ-ションは正に国際協力で建設されるものであり、今後、ミュンヘン工科大学をはじめ、NASAやESAの関係機関との協力も必要である。
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