研究課題/領域番号 |
02044051
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
丸茂 文幸 東京工業大学, 工業材料研究所, 教授 (10013492)
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研究分担者 |
SPADACCINI N 西オーストラリア大学, 結晶学センター, 講師
HALL S.R. 西オーストラリア大学, 結晶学センター, 助教授
MASLEN E.N. 西オーストラリア大学, 結晶学センター, 教授
石澤 伸夫 東京工業大学, 工業材料研究所, 助教授 (90151365)
伊藤 徹三 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (60087400)
大隅 一政 高エネルギー研究所, 放射光実験施設, 助教授 (70011715)
佐藤 能雅 東京大学, 薬学部, 教授 (30150014)
HALL Sydney R. University of Western Australia
MASALEN Edward N. University of Western Australia
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1991年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 電子密度分布 / 精密X線構造解析 / 短波長X線 / 消衰効果 / ペロブスカイト構造 / 軌道放射光 / 単結晶構造解析 / 積分強度 / X線回折 / 放射光 / ペロブスカイト型構造 / 温度因子 / 超伝導 |
研究概要 |
本研究はX線回折法を結晶内の電子状態の研究の有力な手段とするために避けて通ることの出来ない実験上の諸問題を解決すること、とりわけ、計算による補正の難しい消衰効果を無視できる程度まで小さくすること、このために短波長の高輝度放射光を用いることの有用性を検証することを目的として行われた日本およびオ-ストラリアの研究者の間の国際共同研究では、その成果の概要は次のとうりである。 1.高エネルギ-物理学研究所・放射光実験施設のビ-ムライン14Aに設置されている水平型四軸X線回折計を用いて、直径0.145mmの球形に整形したFeTiO_3結晶の積分回折強度デ-タを得た。用いた放射光は波長が0.34965(5)Åおよび0.41996(14)Åで、いずれも垂直ウィグラ-から放出された白色軌道放射光をSiの2結晶モノクロメ-タ-で単色化して得られたものである。各波長でそれぞれ1058および746個の反射の積分回折強度デ-タを得、このうち各々489個および360個の独立な反射デ-タを用いて構造の精密化を行った。消衰効果の補正はBeckerとCoppens(1974)によって与えられた式を用いた。同一結晶について実験室系光源であるAg Kα線(0.56087Å)およびMo Kα線(0.71073Å)を用いて同様な測定を行い、これら四つの異なった波長で得られた結果を比較して消衰効果の低減の様子ならびに解析精度の向上の有無を調べ、次のような知見を得た。即ち、約0.35Åの放射光で得られたデ-タにおいては、消衰効果の補正の有無によって生じる構造因子の観測値の差は最大で4%と小さく、消衰効果を実質的に殆ど免れていた。しかし、0.35Åで得られた回折デ-タは全般的な正確さの点において0.7ÅのMo Kα線で得られたものより劣っていた。こ理由として垂直ウィグラ-から放出された放射光の短波長成分が約0.5Å以下で波長に依存して急激に低下すること、およびその強度が十分ではないことが推察される。これらの理由により結晶に対する入射X線強度の時間的安定性が悪くなり、また回折X線の計数値の統計的誤差が大きくなる。このようにして、短波長X線を用いると消衰効果の低減が実現するが、一方では統計的意味で精度の良い回折強度デ-タを得ることは現状では難しいことが明らかとなった。 2.上記の実験結果は、短波長X線を用いるより試料結晶を小さくする方が、回折の運動学的近似がほぼ完全に成立するような条件を得、消衰効果の無視できる回折強度デ-タを得るのに有利であることを示唆している。本研究の後半ではこの方向に大きく踏み出し、K_2SiF_6やKZnF_3の30μm程度の大きさの結晶を用い、強度の充分大きい0.7Å程度の軌道放射光を用いることによって、消衰効果を殆ど無視し得る精度の高い回折実験を行うことが出来た。この方法に関連した種々の研究結果を以下に要約する。 (1)K_2SiF_6 30μ程度の微小結晶を用いて0.9および0.7Åの放射光を用いて構造解析を行なった。またこれらをMoKα線を用いて測定した結果と比較した。0.9Åの波長を用いて得られた155個の独立な反射デ-タに対してR=0.021を得た。残差電子密度分布を差フ-リエ合成図上で観察したところ、結合に関する理論的モデルから予測される結果と実験結果とは必ずしも一致せず、より精密モデル構築の必要性があることを明らかにした。 (2)KZnF_3 30μm程度の微小結晶を用いて放射光回折実験を行い、X線の散乱強度に対する系統的な透過距離依存性がほとんどみられず、二次消衰効果の影響は極めて小さいことを明らかにした。0.7Åの放射光で得られた回折デ-タの解析結果はほぼ同一波長を有するMoKα線で得られた結果と調和的であるが、より精度の高いものであった。 (3)La_<1.88>Sr_<0.12>CuO_4 微小結晶を用いることによって消衰効果を小さくし、解析精度を上げることを試みた。放射光実験施設のビ-ムライン4Bに設置された。イメ-ジングプレ-トを検出器とする微小単結晶解析装置を用い、約1Åの放射光によりワイセンベルグ写真を撮影し、正方晶系をとる室温相の結晶から直径約25μm程度の良質な微小結晶を選び出した。次にこの微小結晶について水平型四軸回折計を用い、0.7Åの放射光により回折デ-タの収集を行なった。このデ-タは現在解析中である。
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