研究分担者 |
RIKOVSKA Sto オックスフォード大学, クラレドン研究所, 研究員
STONE N.J. オックスフォード大学, クラレンドン研究所, 講師
陸路 直 新潟大学, 理学部, 教授 (90004267)
RIKOVSKA-STONE J. Clarendon Laboratory, Oxford University
MUTSURO N. Faculty of Science, Niigata University
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研究概要 |
強磁性体中に原子核を埋め込み、超低温にすると核スピンは整列する。この整列核からのガンマ線を測定することにより核構造の研究をより精密に行なうことができる。加速器と質量分析器と超低温装置を直結したやり方で(Onーline Nuclear Orientation)安定核から遠くはなれた領域までの原子核の研究が可能となる。この方法で核構造を研究することと、これに伴う超微細相互作用の問題を解くことがこの国際共同研究の目的である。 onーlineのNuclear Orientationの研究では最初埋め込まれた原子核が次々と崩壊するためにどの核からの崩壊によるガンマ線であるか同定するのに因難を伴うことが多い。このため、埋め込まれた最初の時間と同時測定を行なうTimeーresolved Nuclear Orientationの新しい方法を行なった。現在詳しい解析は進行中であるが下記にスピンと核磁気モ-メントを中心に、結果と問題点を示す。これらはスイスにあるCERN研究所のISOLDEとNICOLの ^3He/ ^4He Onーline希釈冷凍機を用いた。 ^<181>Au; ^<181>Hgを最初に埋め込みガンマ線を測定したが、 ^<181>Auと ^<181>Hgの半減期が近い上に、 ^<181>Hgのガンマ線が強いため ^<181>の核整列の測定は難しく、ISOLDEから ^<181>Au自身を直接分離して埋め込む必要があることが判明した。 ^<184>Au; ^<184>Auには69keVのところに53sの半減期をもつ高スピンのアイソマ-が存在することが判明した。基底状態の半減期は12sである。このアイソマ-遷移はその内部転換電子を測定してM3遷移であることを決定した。これによりこれらのスピンは、(2^+,3^+)と(5^+,6^+)が考うられる。 次にHg崩壊からHgーAuーPtーIrの崩壊を研究した。これは、CERN研究所のISOLDEで ^<180,181,182,183,184>Hgのビ-ムを分離して ^3He/^4He希釈冷凍機に導きFe箔に中に埋め込みを行なった。この測定では ^<192>Irを温度計として使用として20ー200mKの温度を決定した。また、Timeーresolved Nuclear Orientationの方法でHg,Au,Ptからのガンマ線を除くことに成功した。 ^<183>Ir,^<182>Ir,^<180>Ir,^<179>Ir(^<183>Hgからのα崩壊による)及び ^<176>Ir(^<180>Hgからのα崩壊による)の核種について核整列の測定を行ないその温度変化を得た。強い超微細相互作用による核スピンの整列を得た。詳しい解析は現在進行中である。 新潟大学の ^3He/^4希釈冷凍機を用いオックスフォ-ド大と共同で平成3年3月に東大の原子核研究所のSFサイクロトロンを用いて試料をつくり、 ^<124>Iのニッケル中でのOffーlineのNMRーONの実験を新潟大で行なった。タ-ゲットは ^<123>Sbを用いて、αビ-ケで照射してRecoilーImplantationの方法でニッケル箔(〜1μm)中に ^<124>I(半減期は4.15d)を埋め込んだ。試料はその後、新潟大へ搬入し、500℃で真空中で30分間熱処理を行なった。7mkに試料を冷却して、603kevのガンマ線の角分布の測定で0度方向における非等方性1.13を得た。NMRーONの方法により共鳴周波数を外部磁場0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.8Tで得た。これにより外部磁場による共鳴周波数シフトからν_0(B_0=0)=165.79(4)MHzを得た。既に知られている ^<124>I磁気モ-メントμ=1.446(4)n.m.を用いることにより ^<124>Iのニッケル中での内部磁場はB_<HF>(INi)=30.08(8)Tと決定した。この値は今までにJamesらによって報告されているB_<HF>(INi)=28.93(4)Tと違いを示している。この理由については現在検討中である。また緩和時間の測定を行なった。その結果、外部磁場0.2T,温度8mkでT_1=3.7(7)sを得た。これは ^<124>Iの鉄中での緩和時間と比べると、コリンハンコンスタントを条件にすると一桁位遅いことになる。 以上、オックスフォ-ド大学スト-ングル-プと新潟大理のグル-プとの、スイスCERN研究所でのISOLDEとNICOLを用いたAu,Ir領域での核種の研究と、新潟大でのI核の超微細相互作用の研究が共同で行なわれてきた。単年度のため、結果の解析が最終にまで行なわれていないが、いずれこの結果は他紙面で発表される。
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