研究課題/領域番号 |
02044057
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山本 格 新潟大学, 医学部, 助教授 (30092737)
|
研究分担者 |
CURTIS B. WI The Scripps Reseach Institute, Department, Member
ROLAND C. BL University of California, San Diego, Depa, Professor
木原 達 新潟大学, 医学部, 教授 (80018324)
広瀬 茂久 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (10134199)
BLANTZ Roland C. University of California, San Diego, Dept. of Medicine, Professor
WILSON Curtis B. The Scripps Research Institute , Dept. of Immunology, Member
WILSON Curti The Scripps Research Institute, Member
BLANTZ Rolan Department of Medicine, University of Cal, Professor
BLANTS Rolan University of California, Dept.Medicine, 教授
|
研究期間 (年度) |
1990 – 1992
|
研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
|
配分額 *注記 |
8,800千円 (直接経費: 8,800千円)
1992年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1991年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1990年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
|
キーワード | 糸球体限外濾過 / 糸球体上皮細胞 / 心房性ナトリウム利尿ペプチド / 受容体 / エンドセリン / 腎糸球体 / 限外濾過 / 形態計測法 / マイクロパンクチャ-法 / mRNA |
研究概要 |
糸球体から濾過される水の量(糸球体濾過値)は糸球体濾過圧と糸球体係蹄壁における水の透過性(糸球体限外濾過係数)により規定されている。そのうち糸球体濾過圧は糸球体輸入動脈と糸球体輸出動脈の収縮と弛緩で調節されているが糸球体係蹄壁を構成する細胞(糸球体内皮細胞,メサンギウム細胞,上皮細胞)で調節されていると推定される糸球体限外濾過係の調節機構はまだ不明である。しかし,糸球体疾患で糸球体濾過機能が低下するのは糸球体限外濾過係数が低下するためと考えられることからその調節機構の解明は腎臓病学の重要なテーマである。これまで糸球体限外濾過係数は血管平滑筋細胞に由来するメサンギウム細胞が収縮,弛緩することで調節されているとする仮説が一般的に受け入れられていた。しかし,糸球体上皮細胞もアクチンなどの収縮蛋白に富み,解剖学的にも水に透過性を調節するのに適した位置にあることから糸球体上皮細胞が糸球体限外濾過係数の調節に関与している可能性も残されていた。 本研究では循環血液量の増加などで心房が伸展すると心房筋より分泌され腎臓に作用しナトリウム排泄や利尿を促進する心房性ナトリウム利尿ペプチドの受容体の腎臓内局在を検索することと糸球体上皮細胞を特異的に傷害する動物モデルで形態機能相関を調べることで糸球体限外濾過係数の調節における糸球体上皮細胞の役割を検討した。 心房性ナトリウム利尿ペプチドの受容体は腎臓では糸球体と髄質内層に多いことがこのホルモンの結合試験で示されているが,どの細胞に受容体が局在しているかは明らかではなかった。また,cDNAクローニングによる研究から心房性ナトリウム利尿ペプチドの受容体には3種のサブタイプがあることが示され,それぞれの受容体を区別してその局在を検索することが必要であった。そこでこれらのサブタイプのmRNAの腎臓内発現部位をRNase protection assayで,発現細胞をIn situ hybridization法で検索した。 RNase protection assayで糸球体にはタイプAとタイプC受容体mRNAがほぼ同量発現され,髄質内層にはタイプA受容体mRNAがそれらとほぽ同量発現されていることが分かった。その局在をIn SITU hybridization法で検索したところ糸球体のタイプAとタイプC受容体mRNAは両床とも糸球体上皮細胞に,髄質内層のタイプA受容体mRNAは集合管上皮細胞にあることが明らかになった。タイプA受容体は細胞内にguanylate cyclaseドメインをもちcGMPの合成を介して心房性ナトリウ利尿ペプチドの生物活性を発現する受容体であるがタイプC受容体は細胞内にこのようなドメインをもたないことから生物活性の無い受容体と考えられている。このことから心房性ナトリウム利尿ペプチドは糸球体上皮細胞にある受容体サブタイプのうち生物活性のあるタイプA受容体を介して糸球体限外濾過係数,さらに糸球体濾過値を増加させることで尿量を増加させるし髄質内層の集合管上皮細胞のタイプA受容体を介しその細胞のナトリウム再吸収を抑制すると考えられた。 一方,抗糸球体上皮細胞抗体の投与により糸球体上皮細胞を特異的に傷害する動物モデルをマイクロパンクチャー法と超微形態研測法で機能形態相関を検討したところ抗糸球体上皮細胞抗体を投与し糸球体上皮細胞を傷害すると糸球体限外濾過係数が低下し,それに伴い糸球体上皮細胞容積が増加することが認められた。このことも糸球体上皮細胞が糸球体限外濾過係数の調節に関与していることを示している。 以上の結果は糸球体限外濾過値は少なくとも糸球体上皮細胞が限外濾過係数を調整することにより調節されていること示した。また、本研究は分子生物学、腎臓病理学、腎臓生理学などの研究者の学際的国際共同研究で初めて可能になった。今後はさらに糸球体上皮細胞の細胞内レベルの糸球体機能の調節機構が解明される必要がある。
|