研究分担者 |
RANDEL Willi 大気科学センター, 大気化学部・大気モデリング課(米国), 研究員
BOVILLE Byro 大気科学センター, 気候および全球力学部・気候モデル課(米国), 副課長
BRASSEUR Guy 大気科学センター, 大気化学部・大気モデリング課(米国), 課長
GILLE John C 大気科学センター, 大気化学部・全球・遠隔観測課(米国), 課長
神沢 博 国立極地研究所, 資料系, 助手 (20150047)
塩谷 雅人 京都大学, 理学部, 助手 (50192604)
SCHOEBERL Ma NASAゴダードスペースフライトセンター, 大気モデリング部門, 研究課長
JAFFE Daniel アラスカ大学, 助教授
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研究概要 |
本研究では,衛星観測デ-タにもとづき,成層圏オゾンの生成・輸送過程を念頭におきながら,その長周期変動に関する研究をおこなった.まずSBUV(Solar Backscatter Ultraviolet)観測にもとづくオゾン混合比デ-タを用いて,赤道域中・上部成層圏においてオゾン場に見られるプラネタリ-波動の時間変動に関する解析をおこなった.次にTOMS(Total Ozone Mapping Spectrometer)デ-タを用い,経度方向の構造に注意しなから赤道域オゾン全量の長周期変動について解析した. 〈SBUVデ-タ解析〉赤道域中・上部成層圏では1週間程度の周期をもつ位相速度の速いケルビン波の存在が知られているが,その鉛直波長は20km程度と短かいため,従来の衛星観測温度デ-タを用いて解析することが困難であった.しかし,SBUVは鉛直分解能が約8ー10kmと比較的よく,またこの領域ではオゾンは光化学平衡にあり温度と逆相関の関係にあるので,オゾン混合比からこの位相速度の速いケルビン波を検出貞きることが予想される.まず,東西波数が1の成分について時間方向のスペクトルをとり,周期7.5日で東進する成分の強度・位相の緯度高度分布について調べたところ,この成分のパワ-は緯度20度以内に限定され,ほぼ赤道で極大をとる対称な緯度構造を持ち,上層ほど東に傾いている鉛直構造が見られた.これらは,下層で励起される鉛直伝播する赤道ケルビン波の特徴に一致といてる.さらに赤道ケルビン波の活動度の長期的な変化を見るため,各同期成分のパワ-を1979年から1986年について調べた.東進成分については1週間程度の周期帯(6ー10日)成分が半年周期で変動しており,また西進成分については10日以上の長周期成分が卓越しているのがわかった.東進成分に見られる特徴を明確にするため,6ー10日周期帯で平均したパワ-スペクトルの時間変化についてみると,1,7月に最大を持つ半年周期の振動が顕著に見られる.この領域では東西風にも顕著な半年周期の変動が知られており,1mb付近では1,7月に東風が最大になる.したがって,ここで見られるケルビン波の活動度の変動は,波の生成そのものの変動のほか,風の場により選択的に伝播した結果によるものとも考えられる. 〈TOMSデ-タ解析〉この解析では,1979年から1989年の11年間にわたるTOMSデ-タを用いた.まず,月平均したデ-タにもとづく赤道上におけるオゾン全量の時間・経度断面について調べたところ,赤道域においてはオゾン全量が東西波数1の構造を持ちながら1年周期で変動しているのがわかった.オゾン全量が最小となる領域は,ちょうど積雲活動が活発な領域と対応しており,対流圏界面高度がそこで高くなることによってオゾン全量が最小となっていると考えられる.上述したように赤道域においては1年周期の変動が顕著であるが,さらに2ー3年周期のモジュレ-ションを受けている.11年間の平均として定義したクライマトロジカルな年変動を差し引いてやると,経度方向に一様性の強い準2年周期の変動が見られる.これは下部成層圏で見られる東西風に準2年周期変動と力学的に密接に関連している.クライマトロジカルな年変動を差し引いたデ-タからさらに帯状平均を引いて経度方向の偏差に注目すると,日付変更線付近に節を持ち,時間スケ-ルが約4年程度の東西変動が見られる.これはエルニ-ニョ・南方振動(ENSO)サイクルと関連しており,エルニ-ニョ時(1982ー83,1986ー87)には偏差が日付変更線の西側で+,東側でーとなる.これは,エルニ-ニョ時に東太平洋の海水温上昇にともなって積雲活動域,ひいては上昇流域が東偏し,これにともなって対流圏界面高度が相対的に東太平洋域で上昇,西太平洋で下降し,結果的にオゾン全量が東太平洋域でー,西太平洋域で+の偏差をもつものと考えられる.
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