研究分担者 |
STOREY J.R. Univ. Auckland, Professor
坂田 通徳 甲南大学, 理学部, 教授 (60068111)
YOCK P.C.M. Univ. Auckland, Professor
藤井 善次郎 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (10022724)
村木 綏 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (70013430)
手嶋 政広 東京大学宇宙線研究所, 助教授 (40197778)
藤井 啓文 高エネルギー研究所, 助教授 (60013439)
河辺 征次 高エネルギー研究所, 助教授 (10044786)
松原 豊 東京工業大学, 理学部, 助手 (80202323)
林田 直明 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (50114616)
木舟 正 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (40011621)
永野 元彦 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (00013384)
政池 明 京都大学, 理学部, 教授 (40022587)
堀田 直己 宇都宮大学, 教育学部, 助手 (60157039)
渡瀬 芳行 高エネルギー物理学研究所, 教授 (70018662)
三井 清美 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (80013340)
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研究概要 |
1987年2月大マゼラン星雲中に発見された超新星SN1987Aからのニュ-トリノの信号が陽子崩壊実験装置の記録されていた事は画期的なことであった。恒星進化の理論によればニュ-トリノのバ-ストを発生する超新星爆晴は中性子星をあとに残す。中性子星は大きな回転速度と強い磁場を持つ。中性子星のまわりには大量の電子及び陽子が存在しているはずである。パルサ-や超新星の衝撃波はそれらを加速する可能性が高い。超新星爆発後間もない時期では中性子星が厚い残骸物質に囲まれているので加速された粒子はこの物質と衝突して中間子を多重発生する。それらは高エネルギ-のγ線とニュ-トリノに崩壊する。したがって爆発まもない超新星1987Aを高エネルギ-γ線の検出器で観察れば高エネルギ-粒子発生の有無を確認できる。超新星1987Aが出現してまもない1987年3月の佐藤文隆のこのような問題提起をきっかけとして、SN1987Aからの超高エネルギ-ガンマ線の観測を開始した。γ線は南半球でなければ観測できないが、ニュ-ジ-ランドのオ-クランド大学の研究者達の協力を得て共同研究が始められた。 ニュ-ジ-ランド南島のブラックバ-チ山の頂上近くの斜面を観測地として選んだ。ここは海抜1640m、南緯41度45分でSN1987Aが南中すると天頂から28度の方向となる。 100TeV以上のエネルギ-のγ線の測定は地上に並べて76台のシンチレ-ション・カウンタ-・アレイを用いて行われた。この観測は1987年10月より開始され、75TeV以上のγ線の強度はこれまでの観測で4×10^<ー14>cm^<ー2>sec^<ー1>以下であることがわかった。これはγ線のスペクトルがエネルギ-の2乗に反比例する形であるとするとγ線の全エネルギ-が、3.3×10^<38>erg/sec以下であることを示すこととなった。 また1TeV〜100TeVのγ線の観測には直径2mの凹面鏡3台を用いて空気シャワ-のチェレンコフ光の検出を行った。この観測では、全体としては3TeV以上のガンマ線の数が5×10^<ー12>cm^<ー2>sec^<ー1>以下であった。これの結果は世界で最も観測の下限値が低く、超新星1987Aパルサ-での宇宙線粒子の加速理論と星間物質量に強い制限を与えた。1988年1月14日、15日の両日SN1987Aの方向から(1.9±0.5)×10^<ー11>/cm^2・secの計数率の増加を観測した。この観測時期は“ぎんが"が超新星からのXの線フレアのピ-クを観測した時とほとんど一致している。これは超新星の近くで活発な高エネルギ-現象が起こっていた時期という事になり、X線と超高エネルギ-γ線の放射に何らかに相関があったことを示唆している。 最近の超新星1987Aの残骸核を取り囲むリングの存在が確認されている。さらに1991年7月頃より超新星1987Aの中心の残骸核と外部のリングの間から電波が観測されはじめ、これは宇宙線の加速がこの領域で起こっているものと考えられている。超新星爆発時の爆風が外部のリングと衝突するのは1993年頃と予測されており、この領域からの粒子加速によるγ線の観測が期待される。また最近の光学観測から中心部には強度が2×10^<37>〜1×10^<38>erg.secのパルサ-の存在が強く示唆され、これらの超高速エネルギ-γ線が我々の装置で受信され事が期待される。 最近はとN1987A以上の南天の星からのガンマ線源の探索を行っている。1991年までにCen A,Vela Xー1,Cen Xー3及びCir Xー1についてはガンマ線の強度の上限値が求められた。またBLIに関してはδ=ー62.3゚,RA=174.3゚の方向に3.4σのピ-クを観測したが、更に詳しい解析を必要としている。 この観測ではいくつかの新しい観測法を試みて成功した。チェレンコフ光の斜め入射による100TeV領域のγ線の検出有効面積の拡大や鏡とカウンタ-・アレイの同時計測による方向決定較正法が確立された意義も大きい。また月の影を用いて検出器の角度分解能を較正する方法を初めて開発した。 これまでの観測によって初期の目的は既に達成したが、今後3年間角測を続ける予定である。
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