研究課題/領域番号 |
02044086
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小澤 和恵 京都大学, 医学部, 教授 (00026858)
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研究分担者 |
ピッケルマイヤー ルドル ハノーファー大学, 医学部, 教授
森 敬一郎 京都大学, 医学部, 助手 (80159186)
嶌原 康行 京都大学, 医学部, 助手 (30196498)
田中 絋一 (田中 紘一) 京都大学, 医学部, 講師 (20115877)
山岡 義生 京都大学, 医学部, 講師 (90089102)
PICHLMAYR Rudolf Profesor of Abdomino-transplantation of Surgery, Hanover Medical College
ルドルフ ピッケルマイヤ ハノーファー大学, 医学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1990年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | 肝移植 / Primary Nonfunction Liver / 肝グラフトのViability / 血中ケトン体比(AKBR) / 血中ケトン体比 |
研究概要 |
肝移植においてグラフトが生着するための条件として、1)採取時に肝グラフトがViabilityを有する。2)摘出法が適切である。3)保存が適切である。4)移植手段が確実である。5)術前術後管理がよい。6)拒絶反応がない。などが挙げられるが、出発点といえるグラフトのViabilityが高いことは必須である。現在まで経験ある移植医によってグラフトの良否を決定していたが、科学的な基準によりこれを判定することが急務であった。AKBRが移植後肝グラフトの生着を予知し得る事を明かにした事から、グラフト採取時のドナ-のAKBRと肝グラフトの予後の関係をみたのが本研究である。 平成2年度、3年度研究助成金により以下の成果をおさめた。 1.肝移植後血中ケトン体比(AKBR)測定の意義: ハノ-ファ-医科大学で行われた肝移植後、経時的にAKBRを測定した結果24〜48時間以内にAKBRが1.0以上に上昇する場合、グラフトは生着しICU滞在期間も短く回復する。AKBRが48時間たっても0.7以下の症例はgraft failureのために再移植を受けるか死亡した。再移植が成功した症例は再移植後AKBRの回復がみられたが、再度graft failureになった症例ではAKBRの回復がみられなかった。移植後48時間までに0.7〜1.0のAKBRの値をとった症例は88%がICU滞在期間が延長し、種々の合併症を併発した。この事から、移植後AKBRの経時的測定は移植グラフトのViabilityの判定に有用であることが判明した。 2.移植グラフト採集時Viabillityの判定: 本年度助成金でハノ-ファ-医科大学に派遣した研究員がドナ-病院にチ-ムと共に行動し、グラフト採取前に動脈血を採血AKBRを測定した。前期では経験ある外科医の判断で採取可能と判断されたグラフトをもつ脳死者のAKBRは全例0.7以上を示し、経験による判断の確かさをうかがわせた。後期に入り、緊急移植を要する症例で移植後Initial Nonーfunctioning liver(INF)に陥り死亡するか、再移植を必要とした症例は5例あり、そのグラフト採取時のAKBRは0.7以下を示した。しかし、生着例とPNF例の間にはAKBR以外の肝機能検査、採取前のカテコ-ラミン投与量、脳死後の採取までの時間、移植の際の無肝の時間、グラフトの冷却保存時間などに有意差は認められなかった。一方、採取時0.7未満のドナ-からのグラフトでも生着することがあるが0.7未満を示した群と0.7以上を示した群の間にはそのグラフト生着率で有意差が得られた。 3.京都大学における生体肝移植の経験: この期間中に京都大学では親子間の生体肝移植を31例行った。生体肝移植の利点の一つは高いViabilityの肝グラフトが得られ、保存期間が極めて短い点である。グラフト採取においてはグラフト例にも残存肝側にも血流を遮断する工夫を行い採取時の肝静脈のケトン体比およびAKBRは1.0以上であった。 以上の事から、現在最善のグラフトと考えられる生体からの肝グラフト採取時AKBRは1.0以上を示し、ハノ-ファ-での0.7を境とする生着率の有意差から考えて、脳死者から肝グラフトを採取する場合のAKBRは0.7以上が望ましく、安全域をみこむと1.0以上であるべきと考えられる。一方、0.7以下のグラフトも生着し得る点については、採取時の手技上の問題、保存中の問題、移植手技上の問題、更に、レシピエントの術前の病態が移植された肝グラフトに与える負荷の問題など影響しての結果と考える。 いずれにしても、AKBRをドナ-採取時に測定することにより、PNFを最小限にし得るものと考える。
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