研究課題/領域番号 |
02044099
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
甲元 啓介 鳥取大学, 農学部, 教授 (80032093)
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研究分担者 |
TURGEON B.G. コーネル大学, 植物病理学科, 上級研究員
WALTON J.D. ミシガン州立大学, DOE―MSU植物研究所, 助教授
BRONSON C.R. アイオア州立大学, 植物病理学科, 助教授
YODER O.C. コーネル大学, 植物病理学科, 教授
児玉 基一朗 (児玉 基一郎) 鳥取大学, 農学部, 助手 (00183343)
柘植 尚志 名古屋大学, 農学部, 助教授 (30192644)
小林 裕和 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教授 (80170348)
荒瀬 栄 島根大学, 農学部, 助教授 (40127478)
中島 廣光 (中島 広光) 鳥取大学, 農学部, 助教授 (40144646)
尾谷 浩 鳥取大学, 農学部, 教授 (50032305)
YURGEON B.G. コーネル大学, 植物病理学科, 上級研究員
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
14,700千円 (直接経費: 14,700千円)
1991年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1990年度: 4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
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キーワード | 宿主特異的毒素 / 宿主選択的毒素 / 感染誘導因子 / 毒素受容体 / 解毒酵素 / 毒素合成酵素 / トランスホ-メ-ション系 / 毒素生成遺伝子 / 宿生特異的毒素 / 毒素生成酵素 / 毒素解毒酵素 / 病原性遺伝子 / 形質転換系 / Alternaria / Helminthosporium / 受容性誘導 / 形質転換ベクタ- |
研究概要 |
1.AM毒素およびACT毒素生成アルタ-ナリアの北米分布:太平洋を隔てた北米東部のリンゴ栽培地域に斑点落葉病が近年突発し蔓延中であり、その病原体が日本で最初に発見されたAM毒素I生成菌(Alternaria alternata apple pathotype)と同じグル-プに属することを単離毒素分子の化学的特性から証明した。なを、ACT毒素生成アルタ-ナリアに関しては、調査研究続行中である。 2.宿主特異的毒素(HST)の感染場面での役割:第一次作用点を異にする3群のHST((1)AK毒素、ACT毒素、(2)AM毒素、(3)ACR毒素、HMT毒素などの作用過程を光、代謝阻害剤、化学修飾剤処理で解剖分析して、胞子発芽時のHSTの病理的役割は細胞壊死を引き起こすことではなく、宿主細胞の動的抵抗反応の始動を抑制して遺伝子型特異的に受容性を誘導することにあるとする確証を得た。 3.いもち病菌の感染誘導因子:いもち病菌病原性保持菌株の胞子発芽液から例外なく、非病原性アルターナリアの感染を誘導する因子が酢酸エチル抽出され、各種クロマトグラフィ-で精製した。その作用(感染誘導、原形質膜障害、壊死)は病原菌の宿主範囲のイネ、オオムギ、コムギ、イタリアンライグラスだけに認められた。イネ品種ーいもち病菌レ-ス間の特異性決定ではなく、寄生における両生物間の基本的親和性に関与する宿主識別因子であることが明らかとなった。 4.毒素レセプタ-の単離・精製:(1)エンバクVictoria blight病菌毒素のvictorin抗体から抗idiotype抗体の作成に成功した。本抗体は「victorin毒素と結合する部位」に対して結合する抗体なので、レセプタ-単離に極めて有効なプロ-ブである。(2)抵抗性および感受性ナシ細胞膜画分を単離し、微量のAK毒素を添加すると感受性ナシ画分のみに添加毒素の減少がみられ、AK毒素レセプタ-の存在が示唆された。超微量毒素の検出・定量のために、AK毒素のカルボニル基をカルボジイミド法によりキャリア-蛋白質(BSA)にカップリングし、得られたAK毒素ーBSAをモルモットに皮下注射し、AK毒素抗体を調製中である。 5.病原菌の毒素生成機構と分子生物学的解析:(1)トウモロコシ北方斑点点病菌レ-ス1のHC毒素の生産は1遺伝子座(Tox2)によって支配されている。このサイクリック・テトラペプチド毒素の合成酵素(HTSー1とHTSー2)を純化し,それぞれの分子量を220,000と160、000ダルトンと決定した。(2)HTSー1酵素を部分的にコ-ドしているcDNAをクロ-ニングした。HTSー1酵素遺伝子は毒素生成菌株だけに存在する22kbDNAの一部を構成し、Tox2はgene clusterであるらしい。(3)非リボゾ-ムペプチド合成酵素研究法を本共同研究者Walton博士から技術移転をうけてリンゴ斑点落葉病菌にAM毒素の合成酵素を追求中で、構成アミノ酸依存性のATPーPP交換反応が検出された。一方、(4)ナシ黒斑病菌のAK毒素合成酵素遺伝子、病原性遺伝子のクロ-ニングに向けて、アルタ-ナリアの高頻度形質転換系を確立した。形質転換マ-カ-としてAspergillus nidulans trpCプロモタ-制御下のハイグロマイシンB抵抗性遺伝子を組み込んだプラスミドベクタ-pDH25に、A.alternataの染色体ゲノム当たり約200コピ-存在するrDNA遺伝子配列を挿入してプラスミドベクタ-pDH25の約20倍の形質転換頻度を有する系を確立した。なを、rDNAベクタ-が形質転換体の染色体rDNA領域に相同的に組み込まれることを確認した。この高頻度形質転換系を用いて、変異相補による毒素生産遺伝子の単離が実験的に可能となった。予備テストとして、A.alternataの生産するメラニン色素の生合成遺伝子を単離し、本法の有効性を示した。 6.宿主植物の抵抗性と毒素:HC毒素に対するトウモロコシの反応は一対の遺伝子Hm1で支配され抵抗性が優性である。この酵素学的基盤として、HC毒素解毒酵素が検出され,抵抗性系統のHm1にトランスポゾンを挿入することによりその活性が消失した。 7.2年間にわたる共同研究で、この領域の分子病理学の研究最前線を確実に前進・拡大し、本研究グル-プは世界のトップを走っていると自負するが、最終目的の解明にはなお程遠く、飛躍的進展を図るために本国際共同研究体制を継続し、毒素生合成と受容体の分子生物学に焦点を絞り、研究展開すべきであるとの合意に達した。
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