研究分担者 |
SHIOZAWA Jud マックス, プランク生化学研究所・膜生化学部門, 研究員
LOTTSPEICH F マックス, プランク生化学研究所・遺伝子センター蛋白質化学部門, 教授
OESTERHELT D マックス, プランク生化学研究所・膜生化学部門, 教授
前田 正知 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (80190297)
二井 将光 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (50012646)
池田 己喜子 岡山大学, 薬学部, 助教授 (20112154)
SHIOZAWA Judith A. Max-Planck-Inst. of Biochemistry, Res. Assoc.
|
研究概要 |
1.Cl^ー輸送性ATPaseについて:(1)生化学的研究 Cl^ー輸送性ATPaseのa(54kDa)及びb(50kDa)サブユニットを分離し,部分アミノ酸配列情報を蓄積する目的で,高回収率かつ簡便なelectroelution法を確立し,抗体作成・アミノ酸配列決定に応用できる事を示した。この方法を用い得られたアミノ酸配列は,高等植物のCF_1ーATPase,α・βサブユニットに40〜100%の相同性を示した。この事は,Cl^ーーATPaseがATPase familyの中でFタイプに最も近縁のものであることを示唆した。又,Cl^ーーATPaseのリポソ-ムへの再構成系の改良を行い,2Cl^ー/1enzymeの結合がCl^ー輸送活性に必要であり,Br^ー,F^ーがCl^ー輸送活性を阻害する事を明らかにした。ATPアナログによるCl^ーーATPaseの化学修飾を行い,Cl^ー結合部位・触媒部位(ATP結合部位)はaサブユニットに存在する事が示唆された。(2)遺伝子クロ-ニング (1)により得られたアミノ酸配列に対応するオリゴヌクレオチドを合成し,PCRを利用しcDNAバンクの直接増幅を行った。aサブユニットについて約160bpの候補フラグメントを得(翻訳アミノ酸配列が蛋白質からの配列に100%一致),これをプロ-ブとしてcDNAバンクのスクリ-ニング サブクロ-ニングを行い,候補サブクロ-ンのDNA配列決定を行っている。bサブユニットについても同様に候補PCRフラグメントの同定を進めている。 2.クロロプラストとATPaseについて:(1)生化学的研究 クロロプラストATPaseのαβγ複合体の精製法を確立し,諸性質を明らかにした。至適pH・活性化にメタノ-ルを要求する事・阻害剤感受性の点でCl^ーーATPaseとは異なる性質を有する事,α(52〜53kDa)・β(51kDa)サブユニットのN末端はブロックされている事(Cl^ーーATPaseのa・bサブユニットはブロックされていない),又,γサブユニット(40kDa)のN末端アミノ酸配列はホウレンソウ,クラミドモナス,大腸菌の配列に60%の相同性を示すものであった。(2)遺伝子クロ-ニング PCRによるcDNAバンクの直接増幅を行い,α・βサブユニットの遺伝子断片を同定した(約270bp)。これらからのアミノ酸配列は,高等植物のCF_1ーATPaseの各サブユニットに90%以上の相同性を示した。現在,これらをプロ-ブとしたcDNAスクリ-ニングを進め,βサブユニットについては2種類の候補クロ-ンを得ておりDNA配列決定を進めている。 3.液胞膜H^+ーATPase及びH^+輸送性ピロフォスファタ-ゼ(PPase)について:(1)生化学的研究 粗液胞膜画分の調製を行い,ATP依存性のH^+輸送活性の約70%が液胞膜H^+ーATPaseに依る事を実証した。又,免疫交差反応によりA(66kDa)及びB(57kDa)サブユニットを同定した。PPaseについても,PPi依存性のH^+輸送活性を証明し,免疫交差反応により73kDaのポリペプチドを確認した。(2)遺伝子クロ-ニング PCRによるcDNAバンクの直接増幅により,Aサブユニット(276bp)及びBサブユニット(690bp)の遺伝子断片を得た。これらからのアミノ酸配列は,高等植物の液胞型ATPaseに96%,89%の相同性を示した。現在,これらの遺伝子断片をプロ-ブとしてcDNAスクリ-ニングを進めている。 以上,3種類のATPをエネルギ-源とするイオン輸送系のほかに第二のアニオン輸送系としてsulfate permease(硫酸イオン能動輸送系,ATPをエネルギ-源とする可能性が高い)の存在を支持する結果を得た。即ち,カサノリ培養液である人工海水から硫酸イオンを涸渇させ24時間培養する事により ^<35>SO_4^<2ー>取り込み活性に約3倍の上昇が観察された。又,PCRによるcDNAバンクの直接増幅により,Cys A蛋白質(ヌクレオチド結合部位を有する比較的親水性の高い膜蛋白質)をコ-ドする遺伝子断片(359bp)を得た。そのアミノ酸配列は,シアノバクテリアに55%,大腸菌に48%の相同性を示した。現在,その他の構成サブユニットと予想されるCys W/Cys T蛋白質(疎水性の高い膜蛋白質)及び可溶性の硫酸イオン結合蛋白質についてもPCRフラグメントの同定を進めている。 今後,カサノリに存在する二つのアニオン能動輸送系を重点的に研究を進め,「細胞におけるアニオンの利用・アニオンの役割」について,カサノリを一つのモデル系として明らかにしていきたいと考えている。
|