研究分担者 |
水野 勝弘 カリフォルニア大学(リバーモア), プラズマ物理研究所, 研究主任
FOOTE J.H ローレンスリバーモア国立研究所, MTX担当物理研究員
HOOPER Jr. E ローレンスリバーモア国立研究所, MTX物理グループ
大後 忠志 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (70160463)
多幾山 憲 広島大学, 工学部, 助教授 (40112180)
佐藤 国憲 核融合科学研究所, 助教授 (70126861)
池上 英雄 核融合科学研究所, 教授 (10023699)
HOOPER E.B.J ローレンスリバーモア国立研究所(米国), MTX計画リーダー
久保 伸 核融合科学研究所, 助手 (80170025)
浜本 誠 大分大学, 工学部, 助教授 (30156418)
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研究概要 |
1.米国ローレンスリバーモア国立研究所における自由電子レーザー大電力マイクロ波(140GHz,パルス出力IGW以上)によるトカマクプラズマの電子サイクロトロン共鳴加熱実験(MT計画)で,この大電力マイクロ波がプラズマ中を伝播し,吸収されるように直接観測するため,シュタルク効果を利用した能動的分光計測法によるマイクロ波電場分布計測システムを開発した。この測定法では,プラズマにヘリウム中性粒子ビームを入射し,生成される準安定原子を対象にしてシュタルク効果によるレーザ誘起蛍を観測し,これより電場強度を決定する。自由電子レーザの開発は米国側が担当した。 2.第一年度では,本計測法をトカマクプラズマに適用するため米国側の研究者と十分な研究討議を重ね,このプラズマ中のヘリウム中性粒子ビームの励起・電離過程をレート方程式を用いて数値的に調べた。この結果をもとにして計測システムの設計・製作を行った。最終的に決定した計測システムの概要は次のとうりである。へリウム中性粒子ビームは50keVに加速し,ビーム電流は0.2A以上,それにビーム直径はプラズマ中心で約2cmであること。励起用色素レーザーにはエキシマーレーザー励起方式のものを使用すること。レーザー誘起蛍光の分光検出系は二チャンネルとし,同時に二本の異なった誘起蛍光線を観測できること,等である。 3.第2年度では,平成2年度に製作した本電場測定装置を組立て,その動作特性をテストした。ヘリウム中性粒子ビーム装置では,ほぼ設計値どおり加速電圧50kVで中性粒子ビーム電流0.2Aのものが得られた。このビーム中に生成された三重項準安定原子密度をレーザー誘起蛍光法で測定した。また入射レーザーによる迷光を避けるため,レーザー波長(389nm,2^3S→3^3P)とは異なった。カスケード蛍光(3^3S→2^3P)を観測して準安定原子密度が求められることも示された。この結果,目標としたマイクロ波電場の測定が本計測システムにより可能であることが認められた。 4.第3年度では,MTX計画の実験進行にあわせて,マイクロ波電場計測を行った。最初に,本計測システムの感度較正をするため,トカマク装置のトロイダル磁場(最高6.5T)だけを印加し,これに45keVの中性粒子ビームを入射していわゆるvxB電場(最高96kV/cm)によるモーショナル・シュタルク効果を観測した。色素レーザーの波長を合わせて禁制励起(381nm,2^3S→3^3D)をおこすと上準位3^3Dからの誘起蛍光(587nm線)が明確に観測され,感度較正ができることを示した。 5.次に,トカマク装置の真空中(ブラズマは生成せず)に,全く磁場を印加せずFEL(パルス出力は約1GW,パルス幅は25ナノ秒)だけを入射してマイクロ波電場を同様にして測定した。ただし、FELがトカマク装置内部で強い発光を誘発するので,これを背景光として差し引く処理が必要であった。このようにして求めた光信号と上述のvxB電場によるものとを比較し,最終的にFEL電場強度はピーク値で200kV/cmが得られた。これは,トカマク装置の中心で大電力マイクロ波電場をはじめて局所的に直接測定したもので,このマイクロ波がプラズマによって吸収されるようすを明らかにする上でひとつの基準として役立つものである。 6.最後に,トカマクプラズマ中にFELを入射してそのマイクロ波電場分布を測定する予定であったが,FEL大電力発振の開発に,多くの技術的困難克服のため長期間を要したので,実験時間が足らなくなり,加えてトカマク装置の運転が平成4年7月末で打ち切られてしまったので,この測定には至らなかった。しかし,トカマクプラズマでの電子サイクロトロン共鳴加熱実験で,マイクロ波電場分布を直接測定する計測システムをはじめて開発し,実際に1GW程度の大電力マイクロ波電場をトカマク装置の中心で測定できたことは,プラズマによるマイクロ波の吸収測定上で基準として役立ち,日米間の国際共同研究として,大きな意義があったと考えられる。
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