研究課題/領域番号 |
02044109
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 香川医科大学 |
研究代表者 |
市川 佳幸 (1992) 香川医科大学, 医学部, 教授 (60028355)
大西 平 香川医科大学, 医学部, 講師 (50211107)
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研究分担者 |
山村 卓 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (20132938)
山本 章 国立循環器病センター研究所, 副所長 (00028408)
大西 平 香川医科大学, 医学部(アルバータ大学・医学部), 講師(研究員) (50211107)
横山 信治 アルバータ大学, 医学部, 教授 (10142192)
市川 佳幸 香川医科大学, 医学部, 教授 (60028355)
原 斉 アルバータ大学, 医学部, 研究員
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研究期間 (年度) |
1990 – 1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1992年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1991年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1990年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | コレステロール逆転送系 / アポリポタンパク質 / ディスコイダルHDL / 脂質転送蛋白質 / ピレン-標識脂質 / 脂質人工粒子 / ピレンーコレステロ-ル / コレステロ-ル逆転送系 / 脂質転送蛋白質活性化因子 / ピレン / アポリポタンパクA / ディスコイダル HDL / マウス腹腔マクロファ-ジ |
研究概要 |
平成2〜4年度の本補助金により、末梢細胞に蓄積されたコレステロールを肝細胞へと逆転送してゆく経路について多くの新たな知見が得られた。まず、最初の反応である末梢細胞から血中リポタンパク粒子へのコレステロールの引き出しについては、マウス腹腔マクロファージを用いて実験を行なった。修飾LDLを用いてコレステロールを大量に負荷したマクロファージにHDLなどのリポタンパク粒子を加えると、ここへコレステロールが引き出されてくることが確認できた。また、リン脂質とトリグリセリドで構成した脂質人工粒子の表面にアポリポタンパク質A-I(アポA-I)を結合させた再構成リポタンパク質でも、効率的にコレステロールを引き出すことが分かった。さらに、マクロファージにアポA-Iを単独で加えても培養液中にコレステロールが引き出されてくることが分かった。超遠心法等による分析や電顕写真からこのコレステロールとともにリン脂質がアポA-Iによって引き出され、あわせてリポタンパク質様の粒子を形成していることが分かった。この粒子はHDL生成の最初の段階と考えられているディスコイダルHDL様であった。HDLは、コレステロールを末梢から運びだすことから抗動脈硬化的に働くとされてきたが、この起源などは不明確なままであった。本実験より血中の遊離アポリポタンパク質からHDLが自然発生的に生成し得ることが示された。しかし、この系に脂質人工粒子を加えておくと、ディスコイダルHDLは急速に消失し、人工粒子に吸収されてゆくことが分かった。遊離リポタンパク質によるコレステロールの引き出しは、繊維芽細胞でも同様に観察されたが、血管平滑筋細胞では3分の1から5分の1とかなり低かった。また、これは細胞内のコレステロール濃度とも無関係であった。以上より、細胞からのコレステロールの引き出しについて、遊離リポタンパク質・ディスコイダルHDLを介してリポタンパク質に渡されるという経路が解明された。また、動脈硬化巣の中心となる血管平滑筋細胞がこの経路に対して抵抗性の有ることが判明した。 細胞から引き出されたコレステロールはHDL上でコレステリルエステルとなり、LDL等のリポタンパク質へと転送され、最終は、LDLレセプターを介して肝細胞に取り込まれる。このなかで、リポタンパク質間の脂質転送反応について詳しく検討した。この反応は、脂質転送蛋白質(LTP)によって触媒される。トヨパール系の樹脂を用いるLTPの精製法は、すでに大西・横山・山本により確立されており、今回さらに改良を加えヒト血中よりLTPの大量調製を行なった。さらに、正確な脂質転送速度を求めるために、蛍光脂質(ピレン)で標識した各種脂質(コレステリルエステル・トリグリセリド・リン脂質)を含む脂質人工粒子を用いた系時的活性測定法を開発した。この系を用いて、脂質粒子間でのコレステリルエステルの転送を測定したところ、LTPによる反応には、脂質粒子表面がアポリポタンパク質によって覆われていることが必須であることが分かった。さらに、各種脂質間での転送速度の違いを調べた。LTPによるコレステリルエステル・トリグリセリドの転送速度には大きな差がなかったが、両者を共に含む脂質人工粒子では、コレステリルエステルが選択的に転送され、この選択性には100倍以上の差があった。この事は、コレステリルエステルを大量に含むHDLとLDLの間では、LTPは単にコレステリルエステルの往復を触媒するだけで、正味のコレステリルエステルの転送は行われていない事を意味している。生理的に有効な転送は、HDL-LDLから主にトリグリセリドで構成されているVLDLへのもので、このVLDLが成熟してLDLとなり、肝細胞へ取り込まれてゆくと考えられる。LTPによるリン脂質の転送は他の脂質より少し速かったが、コレステリルエステルとトリグリセリドが互いに競合するのに対し、リン脂質は競合しないことから、リン脂質はLTP上での結合部位も異なり、非特異的なものであろうと考えられた。 ヒト血液による生物学的汚染の問題を避けるため、ウサギ血中からのLTPの精製法を開発した。活性や物理化学的性質はヒトLTPと同様であり、逆転送系の再構成にヒトLTPの代わりに用いれる事が分かった。
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