研究分担者 |
アルバート F.イー ミシカ゛ン大学, 材料工学科, 教授
岡本 康 住友化学工業(株), 千葉研究所, 主任研究員
安田 浩 東洋紡績(株), 総合研究所, 第二研究部長
中川 英昭 三菱油化(株), 高分子基礎研究所, 主任研究員
崔 洛三 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (10227340)
桜田 泰弘 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (50038543)
新川 和夫 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (00151150)
YEE A. F. The University of Michigan, Dept. Materials Science and Engineering
YASUDA H. Toyobo Co., Ltd., Research Institute
CHOI N. S. Kyushu University, Research Institute for Applied Mechanics
NAKAGAWA H. Mitsubishi Petrochemical Co., Ltd., Polymer Science Lab.
SAKURADA Y. Kyushu University, Research Institute for Applied Mechanics
イー F.アルバート ミシカ゛ン大学, 材料工学科, 教授
イー アルバートF. ミシガン大学, 材料工学科, 教授
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研究概要 |
本研究においては多相系高分子材料について(1)光力学(フォトメカニックス)などの光学技術を利用した破壊靭性評価についての新しい試みを研究し、(2)破壊のメカニズムを各種顕微鏡技術を駆使して微視的な立場から実証的に研究することにより、高い醺性を持つポリマ-アロイの開発のための指針を得ることを目的とした。また1991年7月に国際セミナ-を組織した。主な研究実績は次の通りである。 1.反射コ-ステック法によりポリマ-アロイの破壊靭性評価に関する研究 (1)ゴム粒子を多く含む試験材を除き、表面を研磨した後に金属蒸着をほどこすことにより、き裂は試験片に張力を与えたときに鮮明なコ-ステック像を得ることに成功した。 (2)Rosakisらが加工硬化性材料について与えている破壊靭性式を採用してー60℃〜60℃までの温度域でPPO系のアロイの破壊靭性を評価し、線形破壊力学(LEFM)をもとにした評価式による結果と比較した。その結果によるとー60℃〜ー40℃の範囲では両者はよく一致すること、それ以上の温度域では両者の値は異なり、前者が温度と共に靭性値が増加するのに対して後者はほとんど変化せず一定となることが示された。すなわち、コ-ステック法による破壊靭性評価は温度依存性を正しく反映していることがわかった。 2.モアレ干渉法によるき裂周りの変形分布評価 反射コ-ステック法応用の基礎となるのは張力下にあるき裂周りの変形分布である。新しい光力学技術の1つであるモアレ干渉法によりこの変形分布を得ることができた。その結果によると、破断開始荷重の少くとも4割程度の荷重まではPPO系アロイのき裂周りの変形分布は先端からの距離の平方根に比例して変化しており、LEFMの想定する分布となっていることがわかった。しかし室温においては荷重が破断開始時のそれの4割以上になると変形分布が上述の分布から変り、したがってLEFMの適用が出来なくなることが示された。1.の(2)の結果がこの変形分布評価の結果から裏付けられた。変形分布の研究結果を利用して反射コ-ステック法による破壊靭性評価法に多相系ポリマ-の性質に即した修正をほどこすことが今後の課題となる。 3.ゴム微粒子充てん系ポリマ-における高靭性発現機構 (1)ゴム粒子のキャビテ-ションの重要性 光学顕微鏡,走査形若子顕微鏡,透過形電子顕微鏡を用いて、ミクロンオ-ダのゴム粒子を充てんしたエポキシの破壊挙動を微視的に精しく調べた結果ゴムによる強化の機構において最も重要なことは張力下におけるゴム粒子の破裂,すなわちキャビテ-ションであることをつきとめた。張力下での体績膨張の結果ゴム粒子は破裂し、小さな空孔が発生する。これは分子のせん断変形を容易にし、クレイズに先立ってシァ-バンドを発生させ、その結果高い靭性が実現される。この説を別の観点から証明するために高圧力下での引張試験を日米共同で日本において実施した。その結果、圧力の存在がゴムの破裂をおさえ、靭性が向上しないことがつきとめられた。 (2)バイモ-ダルハイインパクトポリスチレンの高靭性化機構 同じ量のゴム粒子でもそのサイズの分布に山が2つある、いわゆるバイモ-ダル形がモノモ-ダル形に比べてより高い靭性が実現することを見出した。透過電子顕微鏡による組織の研究の結果、前者においてはより長く成長するクレイズが多く見られることがわかった。このことは有限要素解析により裏付けがなされた。 4.高分子材料の衝撃破壊に関する国際セミナ-の開催 1971.7.22〜24に福岡市ホテル海の中道において開催した。このセミナ-の組織はこの国際学術研究の代表者と米国の】-トナ-のイ-教授があたった。99人の参加者を得たが、うち17人が外国人であった。会議の成果は454ペ-ジのハ-ドカバ-の本となり、1992年4月に九州大学出版会より出版される。このセミナ-では合計6つの財団から財政的支援をうけることができた。
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