研究分担者 |
ZANGER Ulric バーゼル大学, バイオセンター, 研究員
WALTER Peter カリフォルニア大学, 医学部, 教授
VON HEIJNE G カロリンスカ研究所, 準教授
PARKER Keith デューク大学, 医学部, 教授
WATERMAN Mic バンデルビルト大学, 医学部, 教授
阪口 雅郎 九州大学, 大学院医学系研究科, 助手 (30205736)
諸橋 憲一郎 九州大学, 大学院医学系研究科, 助手 (30183114)
伊藤 明夫 九州大学, 理学部, 教授 (30037379)
三原 勝芳 九州大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (40029963)
WATERMAN Michael R. Vanderbilt University, School of Medicine, Professor
WALTER P. カリフォルニア大学, 医学部, 教授
ZANGER U. テキサス大学, 医学部, 研究員
WATERMAN M.R テキサス大学, 医学部, 教授
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研究概要 |
動物臓器野ステロイドホルモン合成には6種類のP-450が関与し,これらP-450は細胞内で小胞体膜とミトコンドリア内膜に分布している。本研究は,ステロイドホルモン合成の調節機構研究の基礎として,これらP-450の遺伝子の発現調節機構と小胞体膜およびミトコンドリア膜への組み込み機構についての研究を国際共同研究により行ったもので,3年間の研究期間内で得られた主要な研究成果は以下の通りである。 1.P-450遺伝子の構造解析と発現調節機構ステロイドホルモン生合成に関与するP450の中で,副腎皮質に特異的に発現しているP450(11β)に集中して研究を進め,比較のためステロイドホルモン産生臓器すベてに発現するP450(SCC)も研究した。研究はウオーターマンナ博士(テキサス大学)およびパーカー博士(デューク大学)と協力して行なった。 ウシのP450(11β)については,類似した遺伝子が2つ存在することをクローニングで確認し,それらの構造を決定した。又,それぞれの遺伝子のcDNAを培養細胞で発現させ,類似しているが異なる酵素活性を示すことも証明した。さらに,無細胞転写系実験および培養細胞への遺伝子導入実験により遺伝子上流のプロモーター領域を解析し,遺伝子の組織特異的およびcAMP依存的発現調節に関与する4つの塩基配列Ad1〜Ad4を確認した。副腎皮質細胞の核抽出液中にはこれらの塩基配列に結合する蛋白質因子が見出されたが,Ad1〜Ad3に結合する蛋白質が肝臓など他の臓器にも広く分布するのに反しAd4結合蛋白質(Ad4BP)は副腎の他には睾丸,卵巣などステロイドホルモン産生臓器だけに存在した。このため特にAd4BPに注目し,これを副腎皮質細胞の核抽出液から精製した。cDNAクローニングによりアミノ酸配列を決定し,Ad4BPはジンクフィンガーをもつDNA結合蛋白質であることも確認した。ステロイドホルモン生合成に関与するすべてのP450の遺伝子のプロモーター領域にはAd4が存在することも確かめられたので,Ad4とAd4BPはP-450の発現を介してステロイドホルモン生合成を調節する重要な要素と思われる。また,P450(11β)とP450(SCC)遺伝子のcAMPによる発現調節にAd4とAd1が協調的に関与していることも確かめられた。ラットについてもP450(11β)遺伝子の解析を行い,3つの遺伝子の存在を確認してそれぞれの構造を決定した。これら研究のため,ウオーターマン博士,パーカー博士,ザンガー博士が九州大学を訪問し,大村,諸橋がテキサス大学を訪問した。ウオーターマン博士との共同研究の結果は近く論文として発表予定である。 2.P-450蛋白質の小胞体膜とミトコンドリアヘの組み込み。ミクロソーム型P450の生合成と共役した小胞体膜への組み込み機構と膜内トポロジーの形成機構に重点を置き,ウオルター博士(カリフォルニア大学)およびヘイ博士(カロリンスカ研究所)と協力して研究を進めた。 ミクロソーム型P450は分子のアミノ末端に疎水性アミノ酸から成る特徴的な配列をもち,この部分がシグナルアンカー配列として機能する膜結合部位であることは知られていたが,詳細は不明であった。この配列部分を改変して適当なリポーター分子につなぎ,無細胞実験系で翻訳と共役した膜への組み込みを詳細に検討し,膜結合部位のアミノ酸配列とP450分子のアミノ末端の膜内配向との関係を明らかにすることができた。またシグナルアンカー配列と対比して,膜透過停止配列についても人工の配列をリポーター分子に挿入して無細胞系実験系で詳細に検討し,膜透過停止配列が機能するための構造要求性を明らかにした。ミトコンドリア型P450については,前駆体がミトコンドリアへ輸入される機構の研究を進め,特に前駆体がミトコンドリアを認識して結合する段階に関与する細胞質因子をラット肝臓から精製できた。 これらの研究のため,ウオルター博士が九州大学を訪問し,三原がカリフォルニア大学を,阪口がカロリンスカ研究所を訪問した。ヘイナ博士との共同研究の結果は近く論文として発表予定である。
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