研究課題/領域番号 |
02044116
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西川 伸一 熊本大学, 医学部, 教授 (60127115)
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研究分担者 |
レオナード シュルツ ジャクソン研究所, 研究員
ロナルド ハ゜ラシアス バーゼル免疫学研究所, 研究員
マックス クーハ゜ー アラバマ州立大学, 医学部, 教授
小川 峰太郎 熊本大学, 医学部, 助手 (70194454)
林 眞一 熊本大学, 医学部, 助手 (50208617)
COOPER Max D. Howard Hughes Medical Institute Research Laboratory, University of Albama at Bir
PALACIOS Ronald Basel Institute for Immunology
SHULTZ Reonard D. The Jackcon Laboratories.
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1990年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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キーワード | 造血 / B細胞 / 幹細胞 / サイトカイン / cーkit / MーCSF / ストロ-マ細胞 / 大理石病 |
研究概要 |
ヒトやマウスにおいてB細胞は骨髄内で恒常的に生産されているが、B細胞も含めて骨髄内での恒常的造血システム維持のために必要な分子機構について明らかにする目的でいくつかの研究所と共同研究を行った。計画は一年で終了したが、現在までに得られた成果を元に、今後も人的交流は行わないものの共同実験は継続しており、この多分長期にわたる協力関係の契機を与えていただいた本研究助成に感謝する。 さて、今回の研究のもっとも大きな成果は、骨髄での恒常的造血にとって中核的役割を果している二つの系が明らかに出来た事である。先ず、林眞一はこの研究計画が開始された直後に、大理石病の原因遺伝子明らかにすることに成功し、この結果を元にジャクソン研究所のL.D.Shultz博士との共同研究を行い、この突然変異マウスについて組識学的な解析を行った。この結果、MーCSFとその受容体であるcfmsは、従来考えられていたような成熟マクロファ-ジの増殖維持系としての重要性よりも、骨髄腔を形成して造血の場を維持するために必須の系であることが明らかになった。骨髄内で造血を維持するためには先ず骨髄腔を形成することが必要であると言う単純な事実を考えると、今回の我々の結果は造血システムの基本論理を理解するための重要な手がかりを与えたと言える。 一方、骨髄腔が形成されても、ここで造血幹細胞の自己再生が維持されないことには恒常的造血は有り得ない。この分子機構を明らかにするために、我々はまず造血系に発現しているもう一つの受容体型チロシンキナ-ゼcーkitとそのリガンドであるSCFに着目して研究を始めた。実際には、cーkitに対するモノクロ-ナル抗体を作成し、この抗体を使って、cーkitの機能を阻害することによって、成熟マウス体内でのこの分子の機能を調べることを試みた。幸い、この研究が開始された直後にcーkitに対するモノクロ-ナル抗体が作成できたため、B細胞を含むいくつかの血液細胞系列の細胞株についての研究を行っている、アラバマ大学Max D.Cooper博士、及びバ-ゼル研究所のR.Palacios,Fritz Melchers,Ton Rolling博士らとの共同実験を開始した。直接我々も参加したこの研究のは、現在も継続中で、論文として一部がようやくまとまりつつある段階ではあるが、リンパ球も含む全ての血液細胞系列の初期分化の過程の自己再生には、cーkitとそのリガンドが必須のシステムとして重要な役割を演じていると言うことが明らかになった。 ただ、この結果は、主にバ-ゼル研やアラバマ大学で開発されてきた細胞株についての事で、実際に同じ事が成熟マウス内でも起こっているのかに関しては、生体内に抗体を投与する実験を我々の研究所で続けることにより明らかにしていく必要があると考えている。 これらの結果をまとめると、造血システムを次のようにとらえられるのではないかと考えている。現在、造血に関与する分子として20近いサイトカイんが明らかにされ、その遺伝子も既にクロ-ニングが終っている。しかし、この様に多くの分子を造血システムにどの様に配置すればよいのかに関しては明確な考えが殆どまとめられておらず、「サイトカインネットワ-ク」と言う曖味な既念の元に理解しようとする試みがある程度である。しかし、我々の研究結果は、造血システムは数層の階層構造を形成しており、受容体型チロシンキナ-ゼとそのレセプタ-であるcーkit/SCF,cーfms/MーCSFがこの階層構造の下部構造として位置づけらる事を示唆している。即ち、全ての血液系列細胞に共通の自己再生維持システムがcーkit/SCF系であり、この自己再生に必要な場を骨髄内に準備するシステムとしてのcーfms/mーCSF系である。従って、その他の造血因子はこの中核構造の上部に位置して、造血に可塑性を保証する機構として働いていると考えられる。この様な階層構造が造血系の必然的帰結であるかどうかについては、今後造血系の発生過程や、進化過程を検証するな化で明らかになって行くと考えられるが、いくつかの研究グル-プの共同研究を可能にしていただいた本助成がこの方面への研究の発端になったことは確信している。
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