研究課題/領域番号 |
02044125
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
安保 正一 大阪府立大学, 工学部, 教授 (70094498)
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研究分担者 |
SALVATORE CO トリノ大学, 物質物理化学科, 教授
MICHEL CHE パリ第6大学, 触媒化学科, 教授
CHE Michel Universite P. et M. Curie (Paris 6 University)
COLUCCIA Salvatore Universita' di Torino (Torino University)
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1990年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 光触媒反応 / NOx分解 / 光触媒分解反応 / イオン交換触媒 / 銅イオン触媒 / ESR測定 / FTーIR測定 / 表面活性サイト |
研究概要 |
近年世界各地において、排ガス中のNO_Xによる大気汚染は、CO_2による地球温暖化とともに、深刻な問題になりつつあるが、本研究は、環境に優しくクリ-ンなNO_X除去の光触媒系を設計することを目的として行ったものである。イオン交換法により調製したシリカやゼオライトに固定化担持した銅イオン触媒(Cu^+/シリカ、Cu^+/ゼオライト)およびシリカに固定化担持した酸化バナジウム触媒(V_2O_5/SiO_2)を光触媒として常温でNOが窒素と酸素へ直接光触媒分解することを初めて見いだした。また、この新規な光触媒によりNO_X分解の詳細な機構と高効率を連成しうる要因について。精力的に国際共同研究を進め以下に記する多くの貴重な研究成果を得ることができた。 イオン交換法で調製したCu^<2+>/SiO_2とCu^<2+>/YーZeolite試料を高温度で真空排気するとCu^<2+>がCu^+に還元される。還元状態にあるCu^+/SiO_2とCu^+/YーZeolite触媒をNO存在下275Kで光照射(λ>280nm)すると、NOの合触媒分解反応が進行し窒素と酸素が化学量論的に生成する。Cu^<2+>イオンや吸着NOのESRおよびCu^+のホトルミネッセンス(発光)をプロ-ブとして、銅イオン(Cu^+イオン)の励起状態とNO光触媒分解反応の機構を検討した。SiO_2では、2種類(515nmと440nm)の発光が観測できるが、515nmの発光に比べ440nm付近の発光は僅かにショルダ-として観測できた。これらの発光の強度は、試料の排気温度の上昇とともに増加するが、強度比(440/515nm)は減少することが解った。440nmと515nm付近の発光は、それぞれ、Cu^+イオンのモノマ-とダイマ-状態で存在するCu^+イオンに帰属できる。従って、シリカ上では、Cu^<2+>イオンが高温での排気中に拡散するため、Cu^+イオンは主にダイマ-として存在することが解った。一方、YーZeoliteでは、Cu^+イオンはモノマ-とダイマ-の両形態で存在していることが解った。 還元したCu^+/SiO_2とCu^+/YーZeolite触媒上にNOを添加すると、Cu^+イオンに基づく発光の強度と寿命はNO添加により容易に消光され、NO分子がCu^+イオンの励起状態と相互作用することが解った。NO存在下でCu^+/SiO_2とCu^+/YーZeolite触媒を光照射すると窒素と酸素が生成しその生成反応は化学量論的であり、NOの光触媒分解反応が進行することが解った。Cu^+/SiO_2触媒上での、NO光触媒反応の速度とCu^+イオンの励起状態からの発光収率に及ぼすCu^<2+>/SiO_2試料の排気温度の影響を検討した結果、NOの光触媒分解反応における光触媒活性は、触媒のCu^+イオンの発光挙動と良い対応を示した。発光が観測できるCu^+/SiO_2およびCu^+/YーZeolite触媒上にNOを導入すると、Cu^+イオン上に吸着したNO種(NO^-)に基づくESRシグナルが観測される、シグナルは光照射によりその強度が減少する、光照射を止めるとシグナル強度は初期の値にまで回復することが解った。これらの結果から、NOの光触媒分解がCu^+イオンの励起状態(3d^94s^1)からNO分子の反結合性π軌道への電子移動に基づくことが明らかになった。また、SiO_2とYーZeoliteにおける活性の顕著な相違は見られなかったが、Cu^+イオンのモノマ-とダイマ-の比率において顕著な相違が観測された。 一方、高温(675K)でのNO接触分解における活性は、Cu^+イオンの発光挙動とは直接的には対応せず、活性サイトにはCu^+イオン以外のCu^<2+>イオンなどの関連が示唆された。以上、Cu^+/SiO_2とCu^+/YーZeolite触媒、およびV_2O_5/SiO_2触媒上においてNOの光触媒分解反応が進行することを見いだし、その機構を明らかにした。また、担体としてのSiO_2とYーZeoliteの相違を見いだし、今後の高活性な光触媒系の設計に貴重な知見を得た。
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