研究課題/領域番号 |
02044129
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
橋本 芳一 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80051100)
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研究分担者 |
HAL B.Maring University of Rhode Island, Graduate Scho, Marine Sci
RICHARD Arim Univerity of Rhod Island, Graduate School, Marine Sci
ROBERT A.Duc University of Rhode Island, Graduate Scho, Professor
田中 茂 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (10137987)
ARIMOTO Richard Associate Marine Scientist, Graduate School of Oceanography, University of Rhode
MARING Hal B. Assistant Marine Scientist, Graduate School of Oceanography, University of Rhode
DUCE Robert A. Professor, Graduate School of Oceanography, University of Rhode Island
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研究期間 (年度) |
1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1990年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
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キーワード | 大気粉塵 / 大気微量ガス / 大気汚染物質 / 長距離輸送移動 / 大気一海洋間の物質交換 / ネットワ-ク測定 / サハラ砂漠 / 北大西洋 |
研究概要 |
北米大陸からの汚染物質の北大西洋への輸送過程を捕え、汚染物質の海洋大気へ及ぼす影響を把握する事。又、北アフリカ大陸のサハラ砂漠からの砂塵の北大西洋への長距離輸送を確忍し、地球規模での砂塵の長距離輸送移動を定量的に捕える事。更に、有機硫黄化合物の測定結果から、海洋における微生物の生物的活量を捕え、生物起源の硫黄の海洋から大気への放出量を算出しその生成機構を解明する事。以上の研究目的を踏まえて平成2年度においては、北大西洋上の西インド諸島バルバドス島及びスペイン領カナリア諸島において日米共同大気調査を行った。 バルバドス島における日米共同大気調査は、日本側から田中、米国側からMaringが参加し、ロ-ドアイランド大学での1週間の準備と現地バルバドス島での1週間の準備を経て、大気試料の採取を平成2年3月より開始する事ができた。調査地点はバルバドス島東端の岬の先端に選定し、大気試料採取の為に建設された高さ16mの鉄塔上で大気試料の採取を行った。以後一年間、現地のオペレ-タ-により、ハイボリュ-ムサンプラ-は7日間毎、又、ロ-ボリュ-ムサンプラ-は3〜4日間毎にフィルタ-の交換を行い大気試料が採取された。ハイボリュ-ムサンプラ-により採取した試料は、主に大気粉麈中の主要化学イオン種(Cl^-、NO_3^-、SO_4^<2->、Na^+、K^+、NH_4^+、Mg^<2+>Ca^<2+>)及び有機硫黄化合物(MSA:メタンスルホン酸)の分析に使用した。一方、ロ-ボリュ-ムサンプラ-により採取した試料は、大気粉塵中土壌起元素(Al、Si、Fe)及び微量ガス(SO_2、HCl等)の分析に使用した。平成2年3月〜12月の期間中にバルバドス島で採取され慶応大学に郵送された大気試料については、平成2年度にその試料分析をほとんど終了した。 バルバドス島における日米共同大気調査による測定結果(平均大気濃度)を以下に示す。 1.ハイボリュ-ムサンプラ-で採取した大気粉塵試料 (1)主要化学イオン種;Cl^-5.09μg/m^3(n=39),NO_3^- 0.32 μg/m^3(n=39),SO_4^<2-> 1.49 μg/m^3(n=39),Na^+ 3.11μg/m^3(n=39),NH_4^+ 0.14μg/m^3(n=37),K^+ 0.18μg/m^3(n=39),Ca^<2+> 0.28μg/m^3(n=39),Mg^<2+> 0.55μg/m^3(n=39),nssSO_4^<2->(non sea salt sulfate)0.71μg/m^3(n=39). (2)有機硫黄(MSA:メタンスルホン酸)11.4ng/m^3(n=39). 2.ロ-ボリュ-ムサンプラ-で採取した大気粉塵及び微量ガス試料 (1)土壌起源元素;Al 1010ng/m^3(n=76),Si 2270ng/m^3(n=72),Fe 680ng/m^3(n=67) (2)ガス成分;SO_2 0.012ppb(n=73),HCl 0.099ppb(n=49). バルバドス島の海洋大気中のSO_2濃度は、平均値で0.012ppbとなり、北米大陸のニュ-ヨ-ク等の大都市におけるSO_2濃度レベル(10〜100ppb)と比較して1/1000以下の極めて低い値であり、陸上から離れた外洋大気中のSO_2のバックグラウンドレベルであると言える。又、人為的汚染物質である非海塩性硫酸塩(nssSO_4^<2->)濃度も平均値で0.71μg/m^3であり、この値は外洋上でのnssSO_4^<2->の大気濃度0.4〜0.6μg/m^3と同レベルであった。これは、昭和63年度の日米共同大気調査で得られた北大西洋の偏西風帯に位置するバミュ-ダ島の調査結果とは異なり、バルバドス島においては北米大陸からの人為的起源の硫黄が長距離輸送されている可能性は低かった。 一方、大気粉塵中の土壌起源元素、Al、Si、Feの大気濃度は、陸上の大気濃度レベルとほとんど変わらず、周囲に陸地が存在しない海洋大気における濃度としては非常に高い値となった。北大西洋上のバルバドス島は貿易風帯に位置し、年間を通じて北東貿易風が卓越しており、バルバドス島で測定された高濃度の土壌起源元素の原因は、北アフリカ大陸のサハラ砂漠の砂塵が北東貿易風により北大西洋上を長距離輸送されバルバドス島に飛来する事が考えられる。又、この事は、バルバドス島で採取した大気粉塵とサハラ砂漠の砂塵との化学成分の分析結果の一致からも裏付けられた。 スペイン領カナリア諸島での大気試料の採取は、米国側により平成3年3月から開始される。従って、試料の分析はまだ行っていない今後、試料の到着しだい分析を行う予定である。
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