研究分担者 |
KIMBELL Barb New Mexico State Univ., Associated
GOLDEN Rober New Mexico State Univ., Prof.
矢島 信之 宇宙科学研, 教授 (30200489)
折戸 周治 東京大学, 理学部, 教授 (10092173)
吉田 哲也 東京大学, 理学部, 助手 (50222394)
池田 博一 高エネルギー研, 物理部, 助教授 (10132680)
稲葉 進 高エネルギー研, 物理部, 助教授 (10013434)
東 保男 高エネルギー研, 工作センター, 助手 (70208742)
槙田 康博 高エネルギー研, 物理部, 助手 (30199658)
井森 正敏 東京大学, 物理部, 助手 (70011690)
野崎 光昭 神戸大学, 物理部, 助教授 (10156193)
ROBERT Golden NEW MEXICO STATE UNIVERSITY
BARBARA Kimbell NEW MEXICO STATE UNIVERSITY
JONES Vernon NASA―HQ Louisiana State Univ., Prof.
山上 隆正 宇宙科学研究所, 助手 (40013718)
仲井 浩孝 高エネルギー物理学研究所, 加速器部, 助手 (00188872)
春山 富義 高エネルギー物理学研究所, 物理部, 助手 (90181031)
土井 義城 高エネルギー物理学研究所, 物理部, 助教授 (60044765)
ジョーンズ バーノン NASA本部, 教授
キンベル バーバラ ニューメキシコ州立大学, 電気工学部, 助教授
ゴールデン ロバート ニューメキシコ州立大学, 電気工学部, 教授
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研究概要 |
1.全体計画 本計画は,超伝導スペクトロメータ(超伝導電磁石をコアとした宇宙粒子線検出器)を大気球を用いて上空35kmに打ち上げ,磁場空間と荷電粒子の相互作用を利用した,直接的な観測による「宇宙起源反物質探索」を試みる,極めてユニークな実験として立案された。計画は,高エネルギー研,宇宙科学研,東京大学,神戸大学(以上日本)及びニューメキシコ州立大学(アメリカ)の国際共同実験として,計画され,NASAの協力を得て,カナダ・マニトバ州北部のリンレークにて気球による飛翔実験を行う計画である。飛来頻度の高い,1GeV/c以下の宇宙粒子線に焦点をあて,データ収集効率の高い大立体角スペクトロメータによる観測をめざす事を特徴としており,この特徴を生かす為には,磁気的な北極圏であり,人口過疎地であるリンレーク地域が最適な気球飛翔実験域となった(図1参照)。 計画では,平成2年度に,実験の為の現地調査,2年度に第二次現地調査及び予備実験の経験を踏まえて,平成4年度に気球による飛翔・観測本実験を行う予定であった。しかしながら本実験に必要となる「日米政府間の交換文」及び「覚え書き」が,日米両国間の法規上の制約の為,期限内の調印に至らず,平成4年度は計画を再調整し,現地への実験機器の搬送実験,現地での第二次予備実験及び打ち上げ予行演習を行い,地上でのデータ収集をおこなった。また科学観測本実験は,次期3ケ年計画(採択済み)の中で実現を計る事となった。 2.研究経過1)平成2年度・ NASA及びニューメキシコ州立大学との研究協力・準備打ち合わせを行う。・ 第一次の打ち上げ地域(カナダ・リンレーク)現地調査・ スペクトロメーターの調整準備を進め,組立完了後高エネルギー研・加速器ビームを用いた較正実験を行った。・ NASA技術者を招へいし,超伝導スペクトロメーターを実験条件で励磁した強磁場のテレメトリー(無線通信)システムの動作検証,対策の検討をおこなった。2)平成3年度・ NASAとの気球飛翔実験に関する準備打ち合わせ。・ 日本でのBESS気球飛翔実験ワークショップの開催及びニューメキシコ大研究者を招へいし,スペクトロメータ ーの技術的評価・討論。・ 第一次の実験機器の現地への搬送及び第二次現地調査,予備実験。3)平成4年度・ カナダ・リンレークへの研究者の派遣,気球飛翔実験準備及び打ち上げ予行演習。地上での宇宙線観測実験。・ 日本でのワークショップの開催及び,NASAゴダードスペースフライトセンターのBESS気球・共同実験への参加へ の合意,締結。・ NASAとの気球飛翔実験遂行に関する打ち合わせ。 3.研究成果 3年間の共同実験を通し,大規模な気球共同実験の基礎を固める事ができた。この実験は,宇宙線観測の分野では未経験な大立体角・超伝導スペクトロメーターを気球により打ち上げ,「宇宙起源反物質探索」を直接的な方法で行う事にあったが,この3年間で,打ち上げ最適地での打ち上げ準備を完了し,打ち上げ予行演習まで到達する事ができた。図2はその時の地上における宇宙線・負電荷粒子観測の一例を示している。全測定器系が正常に動作し,イベントセレクション・プロセスを通過した,負電荷の(おそらく)ミュー粒子が良質なイベントとして,記録されている。まとめとして,以下の調査研究成果を上げる事ができた。・ 超伝導スペクトロメーターのカナダ・リンレーク地域への安全な輸送について検証できた事。・ カナダ・リンレーク地域の極地的な環境のもとで,気球飛翔実験の実現に技術的な見通しを得とともに, 多大な現地調査資料(地質,気候,環境等)を蓄積できた事。・ 予備実験の為の長期滞在中の準備,現地での生活,現地のコミュニティーとの交流等を通して,次期計画 となる今後の本実験へのグローバルな態勢・基礎固めを終える事ができた事。 今後はこれらの貴重な現地調査,予備実験結果をもとに,次期計画のなかで,超伝導スペクトロメータを用いた「宇宙起源反物質探索」気球飛翔実験の実現に結びつけたい。
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