研究課題/領域番号 |
02044168
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
影井 昇 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 室長
|
研究分担者 |
薬袋 勝 山梨県衛生公害研究所, 専門研究員
荘 和憲 山梨医科大学, 助手 (90154682)
太田 伸生 岡山大学医学部, 助教授 (10143611)
加茂 悦爾 巨摩共立病院, 院長
保阪 幸男 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 客員研究員 (60072873)
小山 力 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 客員研究員 (70072874)
GANG Feng Xin Hunan Institute of Parasitic Diseases
MING Pu Kai Hunan Institute of Parasitic Diseases
REN Zhou Da Hunan Institute of Parasitic Diseases
|
研究期間 (年度) |
1990
|
研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
|
配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1990年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
|
キーワード | 日本住血吸虫症 / 洞庭湖 / 疫学 / 免疫病理学 / 血清疫学 / 抗体イディオタイプ / プラジクァンテル / 中間宿主貝のコントロ-ル |
研究概要 |
本研究は1988年度より始まり、洞庭湖周辺における日本住血吸虫症の免疫病理学および疫学的解析に中間宿主のコントロ-ルに関する研究を加え、新しい総合的撲滅法を検討してきた。現在までの調査研究、とくに1990年度の成果の概要は以下のようである。 1、環境の異なる3地区における疫学的解析:丘陵地で、わが国の同症流行地に類似した地形をなす地域(A地区)、三方を洞庭湖に囲まれた半島型地域(B地区)および洞庭湖に面している島嶼で、濃厚感染地域と考えられるところ(C地区)の住民と飼育動物について、糞便検査と各種調査を実施した。 各地区の住民における同症の感染率は、A地区では1,057名検査し20.6%、B地区では1,073名の検査で18.9%、C地区は161名で49.7%であった。感染者の年齢を見ると、A,B両地区では低年齢層において低感染率であったが、C地区は低年齢層でもすでに高率(約50%)を示した。また、A,B両地区とも農業従事者において感染率が高く、C地区では漁民と学童に高い感染率がみられた。糞便内の虫卵数(EPG)と症状についての関係を調べると、両者の間には有意の関連が認められた。なお、各地区における中間宿主貝の生息密度およびその日本住血吸虫感染率と、そこでの住民の同症感染率との関係を調べたが、それらの間には有意の関連は認められなかった。飼育動物の同症調査では、牛、豚、犬および猫などに比較的高率の感染がみられ、本性の撲滅における保虫宿主の管理の重要性が示唆された。 2、治療薬(Praziquantel)投与と血中抗体の変動の解析:本研究では感染者を治療し、治療前後の血中抗体の変動を長期間検査した血清疫学的解析を試みている。その結果を要約すると、COP法、血球凝集反応法、ELISA法およびWesternーBlotting法のいずれでも、治療成功群は治療後6カ月で抗体が明らかに低下し、その後12カ月、24カ月とさらに低下する傾向を示す。ところが、不完全治療に終った例では、いずれも抗体の変動はみられないことがわかった。また、本症の濃厚感染地とみられる地域(C地区)と、感染の機会が少ないと考えられる地域(A地区)との住民集団における治療前後の抗体価の変動をみると、A地区では治療後明らかに抗体価は低下するが、C地区ではその変動がみられなかった。以上のことより、このような方法(とくにELISA法)で血中抗体の変動を精密に検査することにより、治療効果の判定が可能であるばかりでなく、地域の本症撲滅状況についての解析に役立つことが示唆された。 3.本症の血清疫学的解析のための抗体イディオタイプの応用性:住血吸虫症の感染経過にともない、抗虫卵IgG抗体に表現されるイディオタイプが変化することが知られている。本研究では、中国の日本住血吸虫症患者血清中に存在する細胞反応誘導活性を、日本の同症既住者末消血単核細胞およびT細胞を用いて調べた。 その結果、中国の同症患者血清中には抗虫卵IgG抗体に表現されるイディオタイプが存在し、その出現には個人差があること、また、そのイディオタイプに反応する感染T細胞の出現にも個人差があることがわかった。その抗虫卵IgG抗体イディオタイプは、治療により直ちに変動すること無く、抗虫卵抗体の抗体価に必ずしも関連しない。さらに、その抗体価が著しく高い肝脾腫型患者では、細胞反応の誘導活性が認められない例なども現れる。これらのことより、抗体イディオタイプの情報は、従来のELISA法などでは得られない新しい血清疫学的マ-カ-となりうることが示唆される。 4.中間宿主貝のコントロ-ルに関する検討:同貝の生物学的コントロ-ルを考え、中国産および日本産のOncomelania貝について寄生性原虫類の検索を行った。現在までに繊毛虫の1種を両国産貝より検出しているが、その有用性についてはまだ明らかではない。薬剤による同貝のコントロ-ルに関しては、農業用薬剤のCartapおよびTribromosalanがその目的に応用しうることが示唆された。
|