研究課題/領域番号 |
02044169
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
熊谷 進 国立予防衛生研究所, 食品衛生部, 部長 (60109965)
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研究分担者 |
NORRED W.P. 米国農務省, Richard B. Russell農業研究センター, Research L
岩城 正昭 国立予防衛生研究所, 食品衛生部, 研究官 (20176530)
春日 文子 国立予防衛生研究所, 食品衛生部, 研究官 (40183777)
伊藤 嘉典 国立予防衛生研究所, 食品衛生部, 研究官 (00168387)
上村 尚 東京都衛生研究所, 生活科学部, 主任研究員
一戸 正勝 国立衛生試験所, 衛生微生物部, 室長 (30132880)
NORRED M.P. USDA, Richard B・Russell Agricultural Rese, Research L
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1991年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1990年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | F.moniliforme / フモニシン / ウマ白質脳炎 / 毒性学的研究 / 毒素 / カビ / スフィンゴ脂質 / Fusarium moniliforme / カビ毒 / ウマ白質脳症 |
研究概要 |
F.moniliformeはウマ白質脳炎の原因であることが判明しており、近年、ヒト食道癌との関連も示唆されている。同カビの産生する毒素もいくつか単離されているとはいえ、それら化合物と疾病との関連は未だに不明であり、未知毒素の関与も否定できない。以上の背景の下に、本研究では、F.moniliformeの毒性学的研究を行ない、以下の成果を得た。 1 米国産輸入トウモロコシ300試料についてFusarium汚染の実態調査を行なった結果、248試料に汚染が認められた。国内産オオムギ、同コムギ、輸入オオムギ、同コムギ、同ハトムギについて調査を行なった結果、主にF.graminearum、F.avenaceum、F.poaeが分離され、F.moniliformeは国内産コムギと中国産およびタイ国産ハトムギの小数例からのみ分離された。さらに国内農作物栽培土壌における分布調査の結果、F.moniliformeおよびF.subglutinansはサトウキビ畑のみから分離され、F.moniliformeは国内土壌には普遍的には存在しないことが判明した。 2 農作物中のフモニシン分析法を検討した結果、陰イオン交換カラムを用いて精製した後に発蛍光試薬(オルトフタルアルデヒド)と反応させ、HPLCで分離して蛍光を測定する方法が優れていることが判った。この方法を用いて、国内産米より分離したF.moniliforme var.subglutinansと同コムギから分離したF.moniliformeのフモニシン産生性を調べた結果、いずれの種にも対照として用いた南アで採取されたF.moniliforme株に匹敵する毒素産生能を示す株が認められた。米国産および南ア産輸入トウモロコシについてフモニシン汚染調査を行なった結果、それらトウモロコシにフモニシンB1 0.05ー7.55ppm、B2 0.01ー2.42ppm、南ア産のものにB1 0.05ー1.21ppm、B2 0.01ー0.52ppmの汚染が認められた。 3 輸入および国産農作物から分離されたF.moniliformeとF.moniliforme var.subglutinans株の抽出精製分画について、マウス致死毒性、下痢原性、ラット血管透過性、肥満細胞分泌機能、白血球遊送を指標として毒素の検索を行なった結果、一株について脂溶性画分に比較的強いマウス致死毒性が認められた。この画分は、リボソ-ム膜と赤血球膜に対して機能障害性を示したので、これを指標として毒素の精製を遂行中である。また水溶性抽出物のSephadex LH20カラムクロマトグラフィ-分画について、各種株化培養細胞および肝初代培養細胞の増殖を指標として毒素の検索を行なったところ、新規毒素の可能性を示す画分を得ることができ、これについては毒素の精製を継続中である。 4 米国側分担研究者は、フモニシンのラット肝細胞に及ぼす毒性影響を検討した。その結果、肝細胞の蛋白合成およびスフィンゴ脂質生合成を阻害することが認められた。スフィンゴ脂質生合成阻害については、sphingosineおよびsphinganineからセラミドへの合成経路中のsphingosine Nーacyltransferaseとsphinganine Nーacyltransferase活性が阻害されることによることが判かった。 以上、我が国への輸入農作物、とくにトウモロコシについては高頻度に、F.moniliformeとその近縁種およびそれらカビが産生するフモニシンにより汚染されていること、国内農作物および農作物栽培土壌の一部にフモニシン産生性のF.moniliformeおよびその近縁種が存在することが見出され、我が国においてもこれらカビが産生する毒素によるリスクが存在することが示唆された。また、F.moniliforme var.subglutinansのフモニシン産生性が初めて証明された。さらに本研究で分離した株について、新規毒素を産生する可能性が見出され、フモニシンについては、細胞レベルでの作用機構についての新知見が得られる等、二年間のプロジェクト研究としては極めて大きな成果が得られた。
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