研究分担者 |
U. Graham ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 助手
S. Poulson ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 助手
L.M. Kump ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 助教授
K. OsseoーAsa ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 教授
奈良岡 浩 東北大学, 理学部, 助手 (20198386)
北風 嵐 東北大学, 理学部, 助手 (90035064)
林 謙一郎 東北大学, 理学部, 助教授 (40124614)
島田 昌彦 東北大学, 工学部, 教授 (80029701)
平井 敏雄 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50005865)
SIMON R.Poulson College of Earth and Mineral Sciences, Pennsylvania State University.
URSULA M.Graham College of Earth and Mineral Sciences, Pennsylvania State University.
LEE M.Kump College of Earth and Mineral Sciences, Pennsylvania State University.
GRAHAM U. ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 助手
POULSON S. ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 助手
KUMP L.M. ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 助教授
OSSEOーASARE アサレ ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 教授
GRAHAM U ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 助手
OSSEO Asare ペンシルヴァニア州立大学, 地球及び鉱物科学, 教授
塚本 勝男 東北大学, 理学部, 助手 (60125614)
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研究概要 |
当初の予定通り,1.ケイ酸塩メルト中の硫化物の化学組成,同位体組成およびそれらの生成メカニズム,2.天然の黄鉄鉱の電気化学的特性,3.鉄硫化鉱物の物理・化学的特性を測定するための新しい実験方法・装置の開発,4.熱水溶液中での鉄硫化鉱物の生成メカニズムと物性との関連,などについての研究を行った。 1.花こう岩中のイオウおよび鉄の含有量,イオウ同位体比などから岩石中にイオウはFeSあるいはケイ酸塩鉱物中のHSとして存在し,イオウ含有量と鉄含有量間には明瞭な相関があることを明らかにした。このことはメルト中でイオウはS^<2->,Fe3SO2 およびFesとして存在していることを示している。2.本邦およびカナダ各地の種々鉱床,沖縄トラフや東太平洋海嶺などの海底熱水鉱床より採取された黄鉄鉱約100個について,微量元素(As,Sb,Co,Ni,Au,Ag,Cu,Zn)濃度の測定を行い,熱電率の測定から推定される半導体的性質,格子定数,反射率および光学的異方性などの物性との関連を明らかにした。微量成分のうち黄鉄鉱の物性と顕著な関連が見いだされたのはAs,Sb,Co,Niであった。As,Sb含有量が高い黄鉄鉱は熱伝率が大きく(p型半導体),これからの元素がドナーとしての働きを有することを示唆する。この種の黄鉄鉱は格子定数が大きく,光学的異方性が強い傾向がある。熱伝率の小さい(n型半導体)黄鉄鉱中にはNi,Coの含有量が高く,これらの元素がアクセプターとして働いているものと思われる。このように各種微量元素が黄鉄鉱の物性と明瞭に関連していることが明らかになった。3.鉄硫化物のイオウ同位体比および鉱物-熱水溶液反応を研究するための新方法を確立した。bulk試料で測定されていた堆積岩中の硫化物のイオウ同位体比をNd-YAGレーザーを用いてガス化させ,微小領域(〜数百ミクロン径)のイオウ同位体比を測定する方法を確立した。この方法を堆積岩中の黄鉄鉱に応用し,イオウ同位体比が微小領域内で大きく変動していることを見いだした。このような試料は始生代のものにも普遍的に見られ,硫酸還元バクテリアの活動による生物起源の黄鉄鉱であることが示唆された。熱水溶液中での硫化鉱物硫化鉱物の溶解度を,その場観察法および石英ガラス管法で測定した。これらの実験では鉄硫化鉱物の溶解度に影響を及ぼすガス分圧や酸化還元状態をコントロールするためにイオウの加水分解反応を用いた。4.各種の高温・高圧熱水用合成装置(オートクレーブ,その場観察用熱水循環装置等)を用いて,種々の条件下(HCI-NaCl-FeS-(CaSO4)系, 150-350℃)で熱水実験を行い,黄鉄鉱や 磁硫鉄鉱などの硫化鉱物を合成し,その生成メカニズムを明らかにした。黄鉄鉱は1)磁硫鉄鉱の表面に生成,2)イオウの表面に生成する場合の2つの場合がある。前者の黄鉄鉱は溶液中の硫化水素から直接生成するが,後者の場合一旦ポリ硫化物(H2Sx)をつくり,黄鉄鉱の生成に関与している。両者の違いは物性の違いに現れ,前者に比べ後者の方が格子定数が大きく,相対的に鉄に富み,光学的異方性が強いことが明らかになった。この結果,黄鉄鉱は唯一のキネテイックスの経過で生成されるという今までの説が誤っていることが明らかになった。 本研究の結果,鉱物の生成条件および反応メカニズムと鉱物の組成および物性の間には明瞭な関連があることが明らかとなった。本研究で明らかにされた基礎的資料は今後,鉄硫化物を半導体産業,高性能電池,石油,石炭産業での処理材などでの工業的応用に貢献できる。また,大学間協力研究によって共同で各種の実験および測定を行い,活発な意見交換を行った。これらの研究を通して,異なる分野および勧境にある研究者が交流することが非常に有意義であった。
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