研究分担者 |
李 三喜 沈〓化工学院, 講師
李 安東 沈〓化工学院, 講師
丁 峻峰 沈〓化工学院, 副教授
夏 心泉 沈〓化工学院, 副教授
李 洙天 沈〓化工学院, 教授
黒田 真一 群馬大学, 工学部, 助手 (60205250)
小林 正道 群馬大学, 工学部, 講師 (60008448)
矢野 由美彦 群馬大学, 工学部, 教授 (30008510)
LI Zhu-Tian Shenyang Institute of Chemical Technology, Applied Chemistry Department, Profess
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研究概要 |
1.はじめに 代表的な光崩壊性高分子であるエチレン・一酸化炭素共重合体(E/CO)のフィルム試料について,自然環境の差異がE/COの光分解にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために,自然環境が大きく異なる日本国と中国において屋外暴露を実施し,その光分解挙動を比較した.また,単色紫外線を用いてE/COの光分解に及ぼす照射光の波長の影響を検討した. 2.屋外直接暴露 日本側研究グル-プは,自然環境の異なる日本国内の札幌市,銚子市および那覇市の3地点において,1990年10月15日〜1990年11月18日と1991年8月12日〜1991年9月27日に屋外暴露を実施した.中国側研究グル-プは,1990年11月1日〜1990年11月30日に瀋陽市,鄭州市および青島市において,更に1991年8月1日〜199年9月8日には瀋陽市,西寧市および海口市で屋外暴露を行った.暴露日数は0.5〜30日である.暴露期間中の各暴露地の全天日射積算光量と紫外線積算光量が測定された. 3.エチレン・一酸化炭素共重合体の光分解挙動 (1)E/COの光分解は,分子鎖中に存在するカルボニル基によって紫外線が吸収され,主としてNorrishII型反応により主鎖切断が誘起される.その結果,カルボニル基が減少し,末端二重結合が生成される. (2)このような化学構造の著しい変化は,紫外・可視および赤外吸収スペクトルに反映される.光照射前後の試料の赤外吸収スペクトルの顕著な差異は,1719cm^<-1>(C=0伸縮振動)と1430cm^<-1>(カルボニル基に隣接するCH_2基の変角振動)の両バンドの吸収強度の減少し,1640,990および909cm^<-1>の各バンド(いずれも末端二重結合の振動に帰属される)の強度が増大していることである. (3)単色光を用いた照射実験から,波長260〜320nmの紫外線が主鎖切断反応に関与し,しかもこの反応は,280nmの紫外線照射によって最も進行しやすいことが判った. (4)光照射の初期段階で主鎖切断反応が優先的に起こり,分子量が著しく低下することが判明した.この切断反応はカルボニル基濃度に依存し,カルボニル基濃度が高いものほど速やかに進行する. (5)光照射試料では,主として非晶領域の主鎖の切断(低分子量化)により結晶化が起こるため,その密度は未照射試料のものより増大している.密度測定も光分解の進行の程度を評価する一つの簡便な方法である. 4.自然環境の差異とE/COの光分解挙動の関係 (1)屋外暴露の場合,劣化の進行速度は暴露地の全天日射積算光量,特に紫外線積算光量に依存して著しく異なる.これらの光量は暴露地によって著しく異なるので,光分解の程保も暴露地によって異なって来る.実際,紫外線積算光量値に対応して,光分解の程度は,海口市>西寧市>銚子市の順であった. (2)暴露地が同じでも暴露時期が違えば,太陽光中の紫外線の量は当然異なっているので,光分解の程度に違いが生じる.紫外線の量は,銚子市では夏期は秋期の約3割増であり,劣化の程度に差が認められた. (3)E/COの劣化は,紫外線の光量以外の自然環境因子によってはほとんど影響されないと言える. (4)屋外暴露試料の分子量は僅か半日の暴露によっても,当初の約1/3まで低下していた. (5)伸び率は,暴露初期段階に激減する.また,暴露地によって顕著に異なっていた. (6)劣化の進行速度は,カルボニル基濃度および暴露地の紫外線光量に依存して著しく異なるので,E/COを屋外で使用する場合には,使用場所の紫外線光量を勘案してカルボニル基濃度を決定すればよい.
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