研究概要 |
1.平成2年度研究成果平成2年度には,日本の石炭荷揚げ埠頭を調査して,基礎資料の収集を行った。調査の対象は,北海道・苫東コールセンタ,千葉県・出光バルクターミナル,愛知県・中部電力碧南火力発電所,山口県・沖の山コールセンタ,長崎県・電源開発松浦発電所である。この結果,以下の事が明らかになった。(1)各埠頭の荷役運搬システムと配備されている荷役機械の構造が明らかになった。(2)防塵装置付き連続式アンローダ,密閉式パイプコンベヤ,自動散水設備などによって,炭塵飛散による公害発生の防止対策が実施されている。(3)現在,日本の石炭ふ頭における船舶の入港状態は十分余裕がある。総合的なシステム設計,管理,制御の態勢はとられているが,活用されていないのが現状である。この調査に基づき,石炭埠頭荷役運搬システムの最適設計に必要なシミュレーションモデルの母体を作成した。 2.平成3年度研究成果平成3年度には,中国の石炭荷揚げ及び積出し埠頭を調査した。調査の対象は,大連港と秦皇島港である。この結果,以下の事が明らかになった。(1)大連港は荷揚げ埠頭であり,日本の埠頭と同様に船舶の入港状態は十分余裕がある。(2)秦皇島港は積出し埠頭であり,船舶の入港状態は過密である。このような埠頭では,計画的な運営が不可欠である。(3)各ふ頭におけるシステムの構造,船舶の運行状態,ヤードの貯炭量の変動状態が明らかになった。この調査結果と平成2年度に得たモデルに基づき,日中共同でシミュレーション解析手法を確立した。本解析手法は,荷揚げ埠頭を対象に船舶と石炭に着目したシミュレーションであることが特徴である。とくに,不確定な船舶の到着には,モンテカルロ法を適用した。本解析手法は,待ち行列理論と比較して,十分妥当であることが確認された。また,荷役分搬システムの構造について分類し,その特徴を明らかにした。さらに,実状に即したモデル化に基づき,シミュレーション解析を行った。この結果,船舶の荷役待ち時間と年間荷役地の関係,機能的なヤードの貯炭容量と年間荷役地の関係を明らかにした。この結果を,長岡技術科学大学研究報告に投稿し,中国で開催された「荷役運搬機械及び物流システムに関する国際会議」において講演した(4ページ参照)。 3.平成4年度研究成果平成4年度には,中国の上海港石炭荷揚げ埠頭を調査した。調査によって,埠頭の構造の配備されている荷役機械の特徴を明らかにした。その結果,船舶の運行状態とヤードにおける石炭量の変動状態を得ることができた。また,これまでの調査に基づき,シミュレーションモデルをより実状に即したものに改良した。さらに,荷揚げ埠頭のみならず積出し埠頭も対象に数値解析できるようにした。本解析手法を用いて,中国の荷役運搬システムを対象にした事例解析を行った。この結果,積出し及び荷揚げ埠頭におけるシステムの最適化に先鞭をつけた。これにより,設備を拡大,縮小する場合,あるいは石炭需要が変動した場合,どのようにバースの最適能力を設定するべきであるかをを示した。また,事例解析結果に技術経済評価を適用し,コスト面からの最適化を検討した。さらに,現在,埠頭のかかえる大きな問題である環境保全について言及した。粉塵の発生状態とその影響を示し,具体的な対策方法を検討した。以上の研究結果をまとめて,日本機械学会論文集に投稿し,同学会通常総会で講演予定である(4ページ参照)。また,日中合作の報告書を作成した。
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