研究分担者 |
J.T LINDSAY ミシガン大学, フェニックス原子炉実験所, 主任研究員
J.C LEE ミシガン大学, 工学部, 教授
H.S FOGLER ミシガン大学, 工学部, 教授
日引 俊 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (30228746)
米田 憲司 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (10027443)
藤根 成勲 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (90027441)
神田 啓治 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (10027419)
西原 英晃 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (50025920)
LINDSAY J.T. Phoenix Memorial Laboratory, University of Michigan
LEE J.C. Department of Nuclear Engineering, University of Michigan
FOGLER H.S. Department of Chemical Engineering, University of Michigan
LEE J.C. ミシガン大学, 工学部, 教授
LINDSAY J.T. ミシガン大学, フェニックス原子炉実験所, 主任研究員
FOGLER H.S. ミシガン大学, 工学部, 教授
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研究概要 |
京都大学から研究代表者及び研究分担者2名が米国ミシガン大学フェニックス原子炉実験所を訪問し,同実験所の中性子ラジオグラフィ設備及び同付属画像処理装置を用いて,京都大学より持参した試験サンプルの可視化実験を実施した。試験サンプルは厚さ0.5mmのアルミ板を等間隔(1mm)に平行に21枚並べ,その隙間に水を入れられるようにしたものである。実験においては,その隙間に水を満たすことにより水の層の厚さを0〜20mmの間で変化させ,水層の厚さと中性子透過像の明るさとの関係を調べた。 また,米国伝熱会議に出席し,前年度までに本研究課題のもとに実施した長方形流路内空気一水二相流の中性子ラジオグラフィ実験の結果を発表するとともに,関連分野の研究者と情報交換し,米国の中性子ラジオグラフィ研究の状況について調査した。米国では,中性子ラジオグラフィ研究は種々の産業で実際に使われているサンプルの可視化の研究が主体であり,本研究課題のように流体研象の可視化と定量測定というような基礎研究への応用はユニークである。また中性子ラジオグラフィ全体の研究活動は,むしろ日本のほうが活発であるように見えた。 米国より研究分担者1名を招へいし,米国側の中性子ラジオグラフィ研究の進捗状況について講演してもらい,他大学の研究者も交えて意見交換を行った。また,米国より持参したサンプル(ジェットエンジンの燃料噴射ノズル)の可視化実験を,原子炉実験所の中性子ラジオグラフィ設備により行った。熱中性子及び冷中性子の両方の可視化を行って両者の違いも検討した。これらの実験結果よりKURの熱中性子ラジオグラフィと冷中性子ラジオグラフィの設備の相違点が明らかになった。また画像処理方法の改良点についても検討した。 ミシガン大学フェニックス原子炉実験所で実施した実験で得られた画像は京都大学に持ち帰り画像処理し,校正曲線を求めた。また同じ実験を日本原子力研究所JRR-3においても行い,両者の中性子ラジオグラフィ設備の性能の比較を行った。この試験サンプルより得られた水層の厚さと中性子透過像の明るさ(グレイレベル)との関係については中性子輸送計算及びモンテカルロ法により予測も試みた。これらの結果より,試験部における中性子の散乱線の影響は無視できず,画像処理法によりボイド率などの定量的データを測定するさいには適切な補正を行うべきであることが明らかになった。 画像処理法によるボイド率測定の際の画像補正の効果については長方形流路及び円管流路内の空気一水二相流に対して検討した。暗電流,シェーディング,散乱線などの補正について,それぞれの効果を遂一調べ定量的に示した。また,従来のプローブ法によるボイド率測定結果や理論予測との比較を行うことになり,本研究で提案した画像処理法によるボイド率測定の妥当性を検証した。 平成4年度は,平成2年度より開始された研究計画の最終年度である。この間実施した中性子ラジオグラフィ実験で用いた試験サンプルは,日本側からは,円管内空気一水二相流,円管内沸騰二相流,長方形管内空気一水二相流,水層厚さ-グレイレベル校正用基準サンプル,中性子ラジオグラフィ標準サンプルであり,米国側からは多孔盾媒体内浸透サンプル,ジェフトエンジン燃料噴射ノズル等がある。また利用した中性子ラジオグラフィ設備の中性子源は,京都大学研究用原子炉(KUR),日本原子力研究所JRR-3,NSRR,ミシガン大学フェニックス原子炉実験所FNRである。 これらの実験により,長方形流路及び円管流路内気液二相流のボイド率測定のための画像処理法の提案と検証,各中性子ラジオグラフィ設備の性能比較,熱中性子と冷中性子によるラジオグラフィの特性の比較について多くの知見が得られ,今後,中性子ラジオグラフィ技術及び画像処理技術を高度化するうえで有益な知見が得られた。また狭間隙流路内の気液二相流の特性研究という観点からも有益な情報が得られた。日米の中性子ラジオグラフィ設備の性能比較及び産業への応用という観点からも有益であった。これは国際学術研究の最大のメリットであろう。
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