研究分担者 |
劉 育燕 中国地質大学, 副教授
楊 巍然 中国地質大学, 教授
山口 覚 神戸大学, 理学部, 講師 (70191228)
兵頭 政幸 神戸大学, 理学部, 助手 (60183919)
井口 博夫 神戸大学, 理学部, 助手 (40112073)
中村 昇 神戸大学, 理学部, 教授 (90030791)
宇井 忠英 神戸大学, 理学部, 教授 (10007164)
藤井 直之 神戸大学, 理学部(現在,名古屋大学), 教授 (60011631)
後藤 博彌 神戸大学, 大学教育研究センター, 教授 (00031344)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1992年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1990年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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研究概要 |
ユーラシアの東部を占める中国の構造発達史を明らかにすることは東アジアのテクトニクスを解明する上で重要なことである。中国は,原生代の3つの大陸地塊(華北ブロック,華南ブロック,タリムブロック)と多くの微小大陸片で形成された複合地塊であると考えられている。本研究の目的は華南ブロック,華北ブロック及びこれらの2つのブロックに挟まれた秦嶺造山帯の古地磁気学的研究から顕生累代における中国の地殻構造発達史を明らかにすることである。 平成2年度には,華南ブロックの桂林市周辺,秦嶺造山帯北部,華北ブロックの西安市周辺,平成3年度には華南ブロックの宜昌市周辺,華北ブロックの太原市周辺,平成4年度には華南ブロックの昆明市周辺,華北ブロックの斉南市周辺で古地磁気測定用定方位試料の採取及び試料採取地点周辺の地質調査を行った。岩石試料を採取した地層の年代は華南ブロックでは第四紀から原生代中期まで,華南ブロックでは三畳紀前期から石炭紀中期,オルドビス紀前期からカンブリア紀前期,震旦紀前期,秦嶺造山帯では三畳紀前期からデボン紀前期,オルドビス紀中期,カンブリア紀前期,震旦紀中期である。これらの地層から総計1000個以上の磁化測定用円柱試料が得られた。残留磁化の安定性の検討と二次的な磁化成分の除去のためにこれらすべての試料を段階消磁した。各試料の特徴的な残留磁化方向を主成分分析法を用いて求め,段階熱消磁によって得られた各地点の古地磁気方位の信頼性について次の条件に基づいて検討した。 1.各試料の残留磁化が段階消磁に対して磁気的に安定であること。 2.古地磁気方位の集中度を表すκの値が10以上かつα_<95>の値が30゚であること。 3.傾動補正前の古地磁気方位がGDF(Geocentric Dipole Field;地心双極子磁場を仮定したとき,その地点で期待される磁場方向)と95%の信頼限界内で一致しないこと。これによってその地点の古地磁気方位が少なくとも最近の地球磁場によって磁化した二次磁化でないことを判断することができる。 これらの条件を満たした地点の傾動補正後の古地磁気方位からVGP(Virtual Geomagnetic Pole)を求め,華南ブロック,華北ブロック及び秦嶺造山帯の極移動曲線を求めた。これら3つの極移動曲線を比較検討し,顕生累代を通してこれらのブロックの位置関係はProto-秦嶺造山帯(秦嶺造山帯が形成とされる以前の舟状海盆)を挟んで華北ブロックと華南ブロックが存在したと結論づけた。 華南,華北ブロック及び秦嶺造山帯の古地磁気極から古緯度とテクトニックなブロック回転を求め,顕生累代における中国の発達史のモデルを提示した。各ブロックの地殻構造運動から以下のようなことを推論した。 1.カンブリア紀における古地理は北から華北ブロック,Proto-秦嶺造山帯及び華南ブロックの順に北緯5゚から南緯25゚の間に位置していた。 2.東アジアの顕生累代の地殻構造発達史において華北ブロックの北側に沈み込み帯が存在し,華北ブロックは北上を続けながらシベリア・プレートに付加した。 3.華南ブロックと華北ブロックの衝突はそれらの東部から始まり、華南ブロックが白亜紀後期までに約60°の時計廻り回転をしながら華北ブロックに付加した。 4.華南ブロックと華北ブロックの衝突は三畳紀前期以降に始まり白亜紀後期には終了していた。 5.顕生累代を通して華北ブロックとProto-秦嶺造山帯は一体化した状態で北上運動を続けた。 6.カンブリア紀以降三畳紀まで華南ブロックとProto-秦嶺造山帯の間に沈み込み帯が存在した。
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