研究課題/領域番号 |
02045037
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 郡山女子大学 |
研究代表者 |
金田 尚志 郡山女子大学, 家政学部・食物栄養学科, 教授 (50005568)
|
研究分担者 |
黄 慧性 成均館大学校, 家政大学, 講師
金 天浩 漢陽女子専門大学, 栄養管理研究所, 教授
依田 千百子 摂南大学, 国際言語文化学部, 教授 (20149149)
佐原 昊 郡山女子大学, 家政学部食物栄養学科, 教授 (10137614)
金子 憲太郎 郡山女子大学, 短期大学部家政科, 教授 (70112612)
KIM Chhon Ho Hanyang Women's Junior College, Professor
HWANG Hae Sung Sung Kyun Kawan University, Lecturer
|
研究期間 (年度) |
1990
|
研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1990年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
|
キーワード | 韓国食文化 / 厨房女官 / 宮中料理人 / 塩辛 / アラニン / グリシン / グルタミン酸 / 核酸系呈味成分 |
研究概要 |
研究代表者および研究分担者らは過去3年間の日韓国際学術研究において日本の神社仏閣での神饌の調査、現代韓国人の日常食に関する三世代家族と核家族間の比較、日韓男女中学生を対象とした食事の仕方の調査、韓国及び日本食品の食品学的比較検討などを行なってきた。その結果として、韓国から渡来人がもたらした食文化は、神社や寺院の儀礼食などとしては残存しているが、その他の多くは日本人の食嗜好に合わず、次第に消え去ったことを予測した。本年度はこれまでの実績を踏まえさらに検討を加え次のような結果を得た。 1.日韓両国民の嗜好の相違に関して 韓国のソウルと全州などで採取した、塩辛、チゲ、ス-プ、鍋料理など約80検体の食品に関して、一般成分、遊離アミノ酸、遊離糖、核酸系旨味成分などの分析を行い、日本の食品と比較した。その結果は次のようである。(1)キムチなどの副原料として使用されている資材的塩辛は塩分が高く(約20%)、アラニン、グリシンのような甘味のあるアミノ酸が主体になっていたが、惣菜として食される塩辛は塩分が資材的塩辛の1/3以下であり、グルタミン酸が特に多かった。このことは、既に報告した、韓国の家庭で作られるキムチの主体的アミノ酸がグリシンやアラニンであることを裏付ける結果である。(2)韓国の鍋物や煮物は調味料として添加されたと思われる糖はほとんど含まれなかったが、日本の煮物や鍋物には蔗糖が多かった。このことは、日韓両国民の甘味嗜好の差異を示唆している。(3)韓国の煮物や鍋物で核酸系呈味成分の含まれるものは魚介類を多用した料理に限られていた。また、ス-プ類には全く含まれなかった。それに対して、日本の煮物、鍋物、味噌汁の大部分は鰹節や椎茸に由来すると思われる核酸系呈味成分を含んでいた。これらの結果は日本人はグルタミン酸と核酸系呈味成分による旨味を特に好む民族であること示唆している。 以上の結果、日本人は昆布、鰹節の旨味や蔗糖の甘味を好む民族であるが韓国人は塩辛の味に代表される濃味を特に好む民族と思われた。 2.韓国の食文化と女性について 日本の昔の宮中では料理をする者は全て男性で、世襲であった。これは次の四つに分かれていた。(1)天皇が普段食べる料理をつくる料理人。(2)宮中の賜宴などの宴会料理をつくる料理人。(3)宮中の行事などの宴会料理つくる料理人。(4)宮中の祭に神前に捧げる神饌をつくる料理人。 一方、韓国では、李朝の宮廷には料理人として厨房女官(尚宮)と男の待令熱手という専門の調理人がいた。厨房女官には食事係の水刺尚宮、毒味役の気味尚宮、火鉢と鍋の乗った三つの膳を受け持っている煎骨尚宮がいた。水刺尚宮は火厨房で平常の料理だけをつくり、宴会料理は待令熱手がつくった。また、祭祀の場合は奉常寺という官庁が受け持っていた。奉常寺に勤めるものは男だけであった。これは日本の宮中料理人が、天皇の日常食をはじめ全て男であることと大きく異なっている。つまり、韓国においては男の宴会・儀礼食専門のコックが存在している一方、王の食事係としての女性の役割が明確に制度化されている。このことは韓国の食文化における女性の役割の大きさを示している。 3.まとめ 以上の結果から前回予測した、韓国から渡来人がもたらした食文化の多くが日本人の食嗜好に合わず、次第に消え去ったと思われることの一つの要因は両国民族の嗜好の差異、すなわち、日本人は旨味と甘味嗜好、韓国人は濃味嗜好、にあると思われた。しかし、本結果を確証するためには、さらに進んだ、日韓両国食品の食品学的、調理学的観点からの検討に併せて、それらの結果に基づく官能検査が必要であり、渡来人の集団居住地域の食文化などに関する調査研究なども今後の課題である。
|