研究概要 |
HTLVーI脊髄症HAMの自験症例が160例となり,そのうち3例が剖検された。脳・脊髄の神経病理学的検討により,リンパ球,マクロファ-ジを主体とする炎症細胞浸潤が基本的な病像で,胸部脊髄の中・下部を中心に広く脊髄全体,さらには大脳深部白質や中心灰白質にも散在性の広がりを示すことが明らかとなった。それらの浸潤細胞の免疫組織染色を行った結果,T細胞が主体であり,病変の新しい部ではCD4とCD8細胞の両者が,病変の進行した部ではCD8細胞が主体をなすという新しい事実が明らかとなった。DR陽性のマクロファ-ジも病初期より多数出現していた。この免疫染色と二重染色という形で,HTLVーIのgagーpol領域をコ-ドする3.5kbのcDNAをプロ-ブとしたin situ hybridizationを行った結果,少なくとも脊髄病巣に浸潤しているCD4陽性細胞の一部にはHTLVーI proviral DNAが存在することがはじめて確認された(これは世界でまだどこからも報告なし)。 神経組織固有の細胞そのものへのHTLVーIの感染の有無はまだ明らかにできていない。感度を上げること,バックのコンタミを少なくすること,二重染色に工夫をこらすことが必要である。このため,ノンアイソト-プによる方法や,組織切片そのものにPCRをかけてin situ hybridizationを行う方法を検討中である。 ATLにおける神経組織浸襲の病態は佐藤により多数の剖検例での検討がすすんでおり,その実態が明らかになりつつある。病変組織でのPCRを用いたdot hybridizationによるHTLVーI proviral DNAの同定を試みており,さらにin situレベルでのHTLVーIの病変形成への関与を検索したい。
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