研究概要 |
伊東はDMBA前立腺癌モデルにおいてテストステロンにより浸潤性前立腺癌を高率に作成し潜在癌の顕在化の解析を行ないテストステロンの関与を確立した優れた実験系を用いて明らかにした。また肝発癌過程におけるGSTーP陽性巣の進展過程を,コンピュ-タ-による三次元画像再構築より解析し,その進展の場は肝小葉内であり,潜在癌の顕在化には既存組織との相互関係の破綻が重要な要因である事を示した。伊藤はMNUとヨ-ド欠乏症(IDD)の併用による甲状腺腫瘍実験系において,去勢雄ラットでエストロゲン投与により腺癌発現の高率化を実現し,さらにエストロゲンレセプタ-のレベルが腺腫,腺癌への悪性化に伴い上昇する事実から潜在癌の顕在化におけるレセプタ-の関与を見出した。北川(石川)はSV40ーT抗原遺伝子導入マウスでの多段階的肝発癌の進展を明らかにし,Hーrasの活性化が後期に出現する事を示し,Hーrasの活性化が潜在癌の顕在化要因として重要である事を示した。西澤は潜在癌顕在化の機構解明のモデルとしてホルモン依存性の消失に注目し,無血清培地でアンドロゲン依存性増殖を示す細胞株の増殖にはアンドロゲン誘発性増殖因子(SCGF)が関係し,アンドロゲン非依存性株の一部はSCGFをホルモンと無関係に合成するものが存在することを明らかにした。一方,エストロゲン依存性増殖を示す細胞株の一部はアラキドン酸代謝経路を介することをも見い出した。江角は大腸発がんモデルにおけるがん遺伝子の活性化を検索し,ジメチルヒドラジンで誘発したラットの大腸癌では,約70%の腫瘍で,cーHーras遺伝子の活性化が起こっている事を示した。立松はラット胃癌発癌過程におけるペプシノ-ゲン遺伝子のメチル化パタ-ンを検討し,腺腫レベルよりメチル化パタ-ンの変異が明らかに認められることと,前癌病変と考えられているペプシノ-ゲン変異幽門腺でもメチル化変異の可能性を示唆した。
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