研究概要 |
これまで喉頭部病変におけるヒトパピロ-マウイルス(HPV)感染状況について検討してきた。そして成人喉頭乳頭腫も若年性喉頭乳頭腫と同様、HPV感染との関連性が明らかとなった。そこで喉頭癌とHPVとの関連を明らかにすべく、今回検討をおこなった。 昭和60年から平成1年の5年間に喉頭扁平上皮癌と診断された53症例(男性47例、女性6例)のパラフィンブロックからDNAを抽出し、HPV16型感染の有無をE6領域をPCRを用いて増幅し検討した。PCR法はShibataらの方法にもとづいて、HPV16のE6領域を増幅するものである。この方法により、53例中18例(33.9%)にHPV16陽性所見を得た。原発部位別にみると、声門部13/33(39%),声門上部4/19(21%),声門下部1例中1例が陽性となった。組識型別では高分化扁平上皮癌6/17(35%)、中分化扁平上皮癌12/34(35%)、低分化扁平上皮癌0/2の割合であった。用いた症例の大部分はこれまでに報告したとおり喫煙者であった。 これまでの我々の論文では声門部癌にHPV感染が高率に見られることを報告したが、使用した材料がリンパ節転移巣の癌を用いたために症例の片寄りがあることが危惧された。しかし、今回原発巣の生検材料を用いた結果でも同様の結果が示され、声門部癌にHPV感染が多いことが再確認されたが、それとともに声門上部癌にも比較的多くHPVが検出されたことは意外であった。しかも今回の結果では、女性症例に陽性症例がなかったので、これまでの我々の予想と異なった結果となってしまった。さらに症例を重ねて検討したい。
|