研究概要 |
ラット線維芽細胞3Ylをラウス肉腫ウィルス(RSV)でトランスホ-ムしたH21細胞からは、比較的容易にリバ-タントが分離でき,そこからまた再トランスホ-マントが分離できる。ノ-ザンブロットでRSVの転写物を調べると,リバ-タントでは全て検出レベル以下にシャットオフされている。トランスホ-マントでは,RSVで本来予測されるmRNA(38S,28S,21S)以外に18S,15Sの異常に小さいRSV由来の転写物が認められる。この異常なサイズのmRNAの起源とH21におけるRSVの転写調節機構を明らかにするためにクロ-ン化したプロウィルスを調べたところ,H21には1本の完全なゲノムと欠損型のゲノムが存在し、異常なサイズのmRNAは欠損型に由来する。即ち、調べた限りのH21の亜株では,染色体上の別の場所に存在する2つのRSV分子の転写のON,OFFが同期している。欠損型ウィルスは,src遺伝子の極く一部のみを持つだけなので細胞のトランスホ-メ-ションは完全型のプロウィルスからのsrc遺伝子発現による。クロ-ン化した種々の断片を用いてトランスホ-マント,リバ-タントのDNAのメチル化をサザンブロットで比較したところ,プロウィルスより上流の細胞のDNAや,pol,env,srcといったウィルス中央部ではほとんど差が認められないが5'及び3'LTR周辺のメチル化の程度がリバ-タントで高い。MspIで切断し,LTRをプロ-ブとして用いたサザンブロットで,約1.2kbのバンドがリバ-タントに特異的であったが、これは完全型プロウィルスの5'LTRU5内部のMspI切断部位のメチル化によることが分った。一方、RSVプロウィルスを約10コピ-持つXC細胞からも、形態的に異なる細胞が分離でき、それらの間でRSVの転写量が異なる。この場合も、転写量の多い株で,LTRのメチル化が低くなっていた。
|