当初の計画は、我々がこれまでに準備して来たG7Bを用いてヒト単クロ-ン抗体を得るための基礎的条件を検討することであった。しかし、融合条件を決めるための予備的実験の結果から、G7Bの増殖能が培地の血清濃度に強く依存することが明らかになったので、当初の計画を変更して、G7Bから血清濃度の依存性の低い細胞株を分離することを試みた。血清はロットごとに細胞増殖に及ぼす効果が異り、実験条件を均一にするためには出来るだけ細胞の血清依存性を低下させる必要がある。このために、G7Bから出発して除々に血清濃度を下げながら培養を続け、低血清濃度で増殖出来るようになった細胞をクロ-ニングするという操作をくり返しながら、1%の血清添加で継代が可能となったクロ-ンを分離し、B1G3と名ずけた。B1G3は通常の継代に用いる程度の細胞数では1%の血清添加培地で増殖可能であるが、単一細胞での増殖は見られない。しかし、3%の血清添加ではかなり低濃度の細胞数での増殖は可能である。B1G3を15%血清添加培地にもどすと、初期には世代時間のかなりの延長が見られ、適応にかなりの時間を要することが明らかとなった。この理由は明らかではないが、我々の目標は血清濃度に増殖能が左右されない細胞株を得ることであるので、解決を要する大きな問題である。この点については、現在、検討中である。親株のG7Bは培地中にIgGを分泌しているが、B1Gも親株と同程度のIgGを分泌している。B1G3の融合能については進行中である。B1G3株は少くとも現在までに報告されている親株と比較して見劣りせず、今後の改良によりかなり良い親株が開発出来る可能性がある。
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