研究概要 |
イディオタイプ・ネットワ-クが免疫系調節機構に重要な役割を担っていることを利用し、申請書らは腫瘍免疫における抗イディオタイプ(Id)抗体の応用,特にantigen specific immuno modulationとして新しい癌免疫療法の可能性について検索してきた。HLA,メラノ-マ系のId解析を基礎として,抗CEAあるいはアシアロ糖鎖MoAbに対する抗Idモノクロ-ナル抗体(MoAb)を多数確立した。これらを応用して抗原結合部位のidiotype mapping,抗Id抗体の誘導する免疫応答について解析し、腫瘍関連抗原系におけるidiotype network systemの存在を明らかにした。さらに、ある特定の抗Id抗体(Ab^2)により誘導された抗血清(Ab3)が(1)抗原CEAとAb1との結合を阻止する作用を有し、かつ(2)血清学的検索(CEAとの結合反応)および(3)Westem blot analysisによりCEAとの反応性を有することが判明した。これらの成績は特定の抗Id抗体(Ab2)が腫瘍抗原の構造を保持(internal image of antigen)し、抗原特異的免疫応答を誘導することが可能であることを示唆している。 さらに血清学的にinternal imageを有すると考えられる抗Id M_DAbのH鎖およびL鎖のフロ-ニングからV領域超可変部CDR2および3に抗原CEAのdomainIII(AA545〜554)とアミノ酸のホモロジ-が存在していることを証明した。一方,治療実験として同系移植メラノ-マB16に対するワクチン効果を検討した。抗糖脂質GM3 MoAbに対する抗Id MoAbを作製した。抗Id抗体をワクチンとして用いた場合,対照と比較し腫瘍増殖の抑制,生存期間の延長など認める傾向にあった。血清学的にinternal imageをもつと推測される抗Id MoAbは部分的にではあるが抗腫瘍ワクチン効果を有すること,その作用機序として抗・抗Id抗体の誘導およびDelayed type hypersenritivity(DTH)の関与が示唆されている。
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