研究概要 |
1.酸素活性阻害法により抗癌剤をGSTーπ結合性と非結合性に分類した。Etoposide,Adriamycin(ADM),Methoーtrexate,DaunomycinおよびCisplatinは結合性、Bleomycin,Vinclistine,Vinblastine,5ーFluorouracil(5ーFU)は非結合性抗癌剤に分類された。2.ELISAによるGSTーπ測定結果より、細胞内GSTーπ濃度の高いヒト癌細胞株としてPLC/PRF/5(肝癌細胞),HLF(肝癌細胞)を、GSTーπ濃度の低い細胞株としてHep G2(肝芽腫細胞),TMK1(胃癌細胞)を選択し、GSTーπ結合性抗癌剤であるADMに対するIC_<50>を測定した。IC_<50>は前者で高く、後者で低かった。また、GSTーπ結合性抗癌剤Etoposideでも同様の結果であった。つまり、これらの抗癌剤については細胞内GSTーπ濃度と、IC_<50>に相関が認められ、GSTーπの耐性への関与が考えられた。一方、GSTーπ非結合性抗癌剤であるBleomycin,5ーFUではこのような関係は見られなかった。以上の結果、GSTーπと抗癌剤耐性を論ずる時にはまず両者の結合性を明らかにする必要があるものと考えられた。このような見地から、抗癌剤のGSTーπへの結合を阻害する物質を耐性克服剤の候補として捜索した。その結果、抗炎症剤mーbenzoylhydratropic acid(Ketoprofen)が強力な阻害作用を有することを見いだした。KetprofenはGSTーπ結合性を有し、その結合様式はGSHに対しては競合的、CDNBに対しては非競合的であった。3.GSTーπアンチセンスmRNA発現ベクタ-を作製し、ヒト大腸癌細胞M7609にトランスフェクトしたところ、細胞内GSTーπ濃度の低下が認められた。トランスフェクタントの抗癌剤感受性について、現在検討中である。4.Ketoprofenを光学異性体であるd体と1体に分離したうえで、それぞれのADM耐性克服作用について検討した。両異性体とも同程度の克服作用を示したが、生物学的活性を有しない(消炎作用等を有しない)d体は副作用の点から、臨床応用には有利と考えられた。
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