研究概要 |
洪水,高潮,津波,地震,地質の4つの災害について,災害文化の(1)収集,(2)地域性・歴史性の抽出,(3)変貌と限界(4)定量的評価方法の研究を行なっている. 洪水災害の例として,古代では大阪湾周辺近代では鶴見川流域を選んだ.後者においては,都市化の進行に伴う住民の意識や対応に変化を調べた.特に,新住居自衛のための盛り土が遊水機能の低下を招き,かつては無被害であった先住者住宅への水害を起こさせるなど,ハ-ドな対策では十分に対処できない現象が発生している.津波災害文化に関しては,3つの局面に分類して避難行動を考察した.災害に対する思考・信念・対応の形式が「第一局面」であり,志津川町での調査によれば,前兆現象だけでは避難をしないというものが1/6は居り,津波常襲地帯においても「第一局面」の風化の進んでいる.地震災害の例としては,強固な地盤と鹿島信仰の関連について例題の抽出が行なわれた.地質災害とそれに伴う水害の例として,中央高地における土砂崩れ(いわゆる蛇抜)に関し,近世から現代にいたる災害の略年表を初めて作成し,自然開発との関連,発生の予兆の存在などが明らかになった.そのほか,富士山麓の雪しろ水,等の資料収集が行なわれた.地滑り地帯の対策としての法面保護に,石垣が使われる所,植生が利用される所など,地質条件の違いが現われている例を示した. これら個々の災害についての災害文化の収集・解析を行なうかたわら,災害時の人的被害に関連する因子についての総合的考察が行なわれた.(1)自然環境,(2)社会環境,(3)経済条件,(4)政治環境,(5)災害の知識,経験,知恵などの文化的環境が重要であることが結論され,災害文化の研究の重要性が確認された.もっとも,最大の因子は人口密度で,災害の巨大化に大きな役割を果たしている.
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