研究概要 |
本研究では,洪水による河岸侵食と土砂の氾濫堆積の二つの災害要因に注目して,現地調査,実験及び水理解析に基づく基礎研究を行った。 まず,河岸侵食については,バングラデシュの大河川下流部の衛星写真を用いて,河道の平面的変動の追跡調査を行い,平水年でも蛇行区間の河岸侵食が進行しており,しかも大洪水年のような砂州の発達や河岸の前進がほとんどみられないことを指摘した。一方,淀川水系宇治川低水路の河岸侵食の観測を行い,既往の調査結果と併せて河岸侵食と河床変動過程の対応を明らかにするとともに,河岸斜面の安定解析を行った。その結果,河岸侵食断面積は河岸高のほぼ2乗に比例して増加するが,河岸高が大きい場合には崩落土塊の流送の有無によって二つのグル-プの関係に分れることが示された。また,河岸高が最大,最小の2地点について,土貭・地下水位・河川水位の諸条件を変化させ,河岸のすべり破壊をJunbu法で検討し,河岸形状の年次変化の特徴を明らかにした。 つぎに,土砂の氾濫堆積については,1990年19号台風による兵庫及び滋賀県下の洪水災害の実態調査を行い,越流及び破堤氾濫による土砂堆積の多数の亊例を掌握するとともに,愛知川下流部2地点の破堤氾濫状況図を空中写真と現地調査結果から作成し,堤内地盤高,河辺林,土地利用形態などの影響について考察した。一方,堤内地の微細土砂の堆積に関する基礎研究として,植生を模擬した多列円柱粗度水路を用いて,流速分布ならびに浮遊砂の濃度分布と堆積過程を種々の水理条件下で検討するとともに,そのモデル化を行った。すなわち,植生内部と周辺の流速分布の詳細な測定結果から,鉛直方向に3領域区分する新たなモデルを提案した。また,浮遊砂の濃度分布については,流速分布と相似なモデルを仮定し,浮遊砂の拡散・沈降フラックスのバランスから堆積過程を説明するとともに,既往の実験結果への適合性を示した。
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