研究概要 |
鹿児島市は,世界でもっとも活動的な火山・桜島を抱え,火山性地震の危険が大きい。しかも,周辺のシラス台地から供給された粗粒火山性物質の砂質地盤から成り立っているため,液状化の懸念がより一層深刻と言える。地震動災害予測図が求められている所以である。今回は災害予測図作成の基礎となる地盤図をまず作成した。 今回は単年度であるから市内全域のデ-タ収集は不可能に近いので,市内最大河川である甲突川の旧河道が推定されていた鴨池地域をモデルフィ-ルドに選び,ボ-リングデ-タを収集した。しかし,デ-タ記載については各社各様不統一で,信頼性もマチマチであるから,標準となる試料を採取して,これを基にデ-タの読み替えを行う必要がある。そのために鹿児島大学水産学部構内で学術ボ-リングを実施して,オ-ルコアを採取した。このデ-タを参照しながらパソコン上にデ-タベ-スを構築した。以下,現時点で判明した新事実を報告する。 ・鹿児島市での沖積層は厚さ40〜60mであり,鹿児島湾に向かって開いた幅広い谷(内湾)を埋積するように分布している。 ・沖積層の基盤は入戸火砕流堆積物の非溶結部(いわゆるシラス),あるいはその下位の砂礫層であり,いずれも上位の沖積層とではN値にかなりの差異が認められる。 ・大部分の沖積層は海成砂層を主体とし,軽石片とともに多量の貝殻片が含まれている。一方,基盤の砂礫層は層相から河川性に近いものと推定され,安山岩等の小礫が頻繁に含まれているという違いがある。 ・平野下に基盤としてシラスの存在が確認できる範囲は,本地域の南部に局限されており,大部分は欠如していることから,シラス台地の形成後,海進前に侵食削剥されたと推定される。 ・沖積砂層の厚い部分は液状化など震災に対して脆弱な地帯である。
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