研究概要 |
1.水草群落内の付着物をめぐるCNPの動態(渡辺)。諏訪湖のエビモ帯で植物体表と人工基盤について付着物の純増加速度を測定した。1990年5月〜6月上旬の現存量は0.5〜0.65(平均0.57)g/g(エビモ乾重)であり、直線的に増加する期間の増加速度は,人工基盤上で春・秋ともC229mg/m^2・日,N38mg/m^2・日,P5.6mg/m^2・日,クロロフィルーa8mg/m^2・日でほとんど変化がなかった。またエビモ群落単位面積当りのCNPの現存量(5〜6月)はそれぞれ1840,229,31mg/m^2であった。 2.水草群落内動物群集の水質浄化への寄与(鈴木)。これまでに琵琶湖の水草帯に多いヒメタニシが水質浄化に寄与していることが明らかになっており,そのメカニズムは,水中ヨシ茎表面の付着藻の採食による水中栄養塩吸収の促進,ヒメタニシの糞(生活力ある藻類を含む)による栄養塩吸収,カワニナに比べヒメタニシの糞は分解速度が遅い,等の理由によると推定される。それを確認するため,ヒメタニシとカワニナの糞について生産速度と分解速度の比(Pg/R比)をいろいろな条件下で測定した。その結果ヒメタニシの糞のPg/R比は2〜23で,かつカワニナに比べ常に高く,活発に水中から栄養塩を吸収することがわかった。 3.河岸・湖岸帯植物群落の構造とその保全・復元(桜井)。河岸・湖岸に質の高い水辺林をつくる基礎資料とするため,長野県下の自然の水辺林の37立地で群落組成を調査した。その結果本州中部地方ではハルニレ,カラコギカエデ,ウメモドキ,ハンノキ,ヤチダモ等を優占種とする水辺林の組成が植栽種選定に有効なことがわかった。長野県下の主要水系について,生態護岸工法に有用なヤナギの分布について調査するとともに自然低水護岸作用を果しているヤナギの種と根系分布を調査した。その結果ネコヤナギ,イヌコリヤナギ,カワヤナギの有用性が判明した。ヨシノ実地の植栽方法について霞ヶ浦湖岸で試験し有益な成果をえた。
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