研究概要 |
本研究は、昨年度から本年度にかけて開発した雲物理モデルと酸性雪(雨)輸送モデルを用いて、冬期季節風時に日本海上で生成する雪雲に大陸起源の汚染質がどの程度取り込まれるかを解析したものである。水分相の輸送化学種は、NO_3^-,NH_4^+,S(IV),SO_4^=,H_2O_2,O_3の6種である。液相化学反応は雲水と雨水相でのみ有効と仮定した。日本海上で生成する筋状の雪列に対して、二対のロ-ル渦を想定して、12時間分の雲物理場を得た。考慮した21の気相化学種の初期鉛直分布(午前8時)は、1次元輸送/反応モデルを用して調整した:地表レベルでの初期濃度(ppb)は、例えば、[SO _2]=22,[SO_4^=]=0.8,[NO_×]=40,[HNO_3]+[NH_4NO_3]=4.3等である。また、雲水中のバックグラウンド化学種として、Na^+(135x10^<-6>M),Ca^<2+>(5x10┣D1-6M),ssSO┣D24┫D2┣D1=┫D1(8xlO┣D1-6┫D1M),Cl┣D1-┫D1(160x10┣D1-6M)を仮定した。大陸から海洋上に出た汚染気塊には、当初気相(dry sulfate,dry nitrateを含む)物質のみが存在していると仮定し、日本海を渡る間にそれがどの様に変質し、除去されて行くかを調べた。その結果、S分についてみると、最初に(2対のロ-ル渦域を含む)全領域内に存在していた気相のSO┣D22┫D2+SO┣D24┫D2┣D1=┫D1(〓30.3mole)が、12時間後に以下の様に分配された:気相(SO┣D22┫D2+SO┣D24┫D2┣D1=┫D1)57.3%,雲水相(S(IV)+SO┣D24┫D2┣D1=┫D1)2.2%,雪相(S(IV)+SO┣D24┫D2┣D1=┫D1)2.5%,乾性沈着による除去(SO┣D22┫D2+SO┣D24┫D2┣D1=┫D1)32.8%,湿性沈着による除去(S(IV)+SO┣D24┫D2┣D1=┫D1)5.2%;(合計の総モル数〓30.7)。水平風速15m/sを仮定すると、12時間の経過は気塊が約650km洋上を進んだ状態に相当し、ほぼ朝鮮半島等から日本沿岸までの距離にあたる。12時間後の結果は、初期総量の約5%弱のS分が、雲水相と雪相に存在することを示し、従って日本に降下し得ることを示唆している。雲水のpHの最小値は約3.3、最大SO┣D24┫D2┣D1=┫D1濃度は約210μM/1、雪中のそれは約160μM/1であった。
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