研究概要 |
重金属の環境汚染の研究は,汚染地の実態調査,植生や人体への影響及び生物濃縮等に関するものが主体で、土壌生態系即ち土壌微生物や土壌の機能に及ぼす影響は殆ど解明されていない。特に重金属耐性菌の遺伝子レベルでの耐性機構の解明は開始されたばかりで未知の部分が多い。 本年度は、同じ土壌型で汚染程度の異なる水田及び畑土壌を選び,地球上で最も多い化合物のセルロ-スを分解する酵素セルラ-ゼ及び微生物フロラに及ぼす影響について調べた。次いでカドミウム耐性菌を分離する倍地を検討した。得られた結果を要約すると次の通りである。 A.土壌セルラ-ゼに及ぼすカドミウムの影響 1)汚染濃度の最も低い富山土壌(Cd:0.4〜1.2ppm)ではCd濃度の増加に伴い、セルラ-ゼ活性が若干高まった。汚染濃度の低い太田土壌(Cd:1.1〜2.8ppm)ではCd濃度の増加に伴いセルラ-ゼ活性は阻害された。そして、汚染濃度の最も高い対馬土壌(Cd:0.4〜20.3ppm)では,セルラ-ゼ活性はほぼ完全に阻害された。 2)汚加実験では、10,000ppmに至る高濃度のCd,更に1,000ppmのCuにおいてもセルラ-ゼ活性の阻害は,認められなかった。 以上の結果から,供試土壌のCd濃度では直接セルラ-ゼを阻害することはないと言える。従って,Cdは微生物に取り込まれた後,微生物の代謝を狂し,これが土壌セルラ-ゼに反映することが示唆された。 B.カドミウム耐性菌単離培地の検討 普通栄養培地で生育するのは主に土壌の富栄養細菌で,一方アルブミン寒天培地は主に貧栄養細菌である。富山の汚染水田土壌で両培地を比較した。その結果,普通寒天培地ではCd2000ppm添加でCd耐性菌が全く認められないかつた。しかしながら,アルブミン寒天培地ではその濃度でも土壌g当り10^3台の菌数を維持し,コロニ-も多様であった。
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